岡田有希子『Dreaming Girl 恋、はじめまして』

岡田有希子『Dreaming Girl 恋、はじめまして』
発売日 1984.09.21
作詞 竹内まりや
作曲 竹内まりや
編曲 萩田光雄

岡田有希子の最高傑作

またしても作詞・作曲が竹内まりやで、今作で”竹内まりや三部作”は一応完結する。
今回は主題の連続性が途切れて、「親にも内緒の秘めたる初恋」がテーマ。

 ♪恋したら誰だって綺麗になりたい~ ♪ロケットに忍ばせた写真を見つめながら~ 
 ♪今日もまたため息で一言「おやすみ」~ ♪片隅に書き込んだ一言「I Love You」~

「恋に恋する乙女心」を丹念に描写しているが、基盤となるのは、

 ♪ママの選ぶドレスは似合わない年頃よ~ ♪いつまでも子供だと思わないでおいてね~
 ♪ピンクのマニキュアさえ まだまだおあずけなの~ ♪真夜中のテレフォンも許してくれない~
 ♪大人へのステップを歩き始めてるのに~ ♪判ってはもらえない私のこの気持ち~

といった具合に、大人からの束縛に対する反発である。「もう、子供じゃないの!」という自我の発露か。
しかし、反発とはいっても、激情爆発ではなく、あくまでもメルヘンチック、かつ上品に表現していて、結構優雅なムードに仕立てている。

 ♪鏡の前に座り震える指でそっと~ ♪口紅をつけた事ママには内緒よ~ 

清潔な色香まで漂わせているのもポイント高し。
「リトル・プリンセス」ほどのアナクロ感も無いし(タイトル自体は結構キてるが)、ストーリー性もあって、ロマンティックで気品溢れる秀逸な歌詞だと思う。

曲は前作同様にメジャー調で、「A→A”→B→A”」という、三部作の中では最も歌謡曲的な構成となった。
しかし、メロディ自体はやはり’60s風で、今回は「可愛いベイビー」あたりに通じる曲展開である。
それだけに、かなり覚え易いくてキャッチーだし、結構歌い易いメロディだ。

サビもちゃんと高音で盛り上げて”聴かせる”作りにしているし、名曲と呼んで差し支えないと思う。
アレンジは’60sなメロディに多少歩調を合わせながらも、ロマンティックな歌詞を装飾している。
全体としては、ニューミュージックテイストで進行し、これにピアノ・ストリングス・タンバリンがソフトに絡み、緩やかで流麗なサウンドが展開される。

さほどオールディーズ調ではないが、イントロはトレイシー・ウルマン「夢見るトレーシー」(’60s色強し)を想わせる旋律だし、スチールギターを導入したり、所々出てくるブラスの音色なんかは、やはり’60sを意識しているか。
これに要所要所でコーラスが重なり、サウンドに厚みを加えているし、間奏の旋律が全然本編と無関係なのも、努力が垣間見える。派手な仕掛けには乏しいが、上品な作品世界とはマッチしているので、優れたアレンジと言って良いだろう。

この作品、歌詞・曲・アレンジ・歌唱、全ての面で特に欠点が見当たらない。
有希子の作品はいずれもクウォリティが高く、ランクは甲乙付け難いが、トータルバランスという観点で俯瞰すれば、この作品が最もムラ無く均整の取れた完成度を誇るのでは?個人的には、この「恋、はじめまして」を最高傑作に推したい。それにしてもこの作品、”三部作”の中では最もティーンポップ色が強い。

曲調もさることながら、サブタイトル「Dreaming Girl」も60年代っぽいし、歌詞なんてモロに漣健児作品の、弘田三枝子「子供じゃないの」・伊藤ゆかり「大人になりたい」だろう。
竹内が漣から多大な影響を受けている話は、至るところで耳にするが、この作品を聴けば一目瞭然である。
ただし、少女の自我をストレートに出す事無く、上品に表現しているくだりは、漣とは異なる個性だし、それがカマトトっぽい厭味にならないのだから、やはりアーティスティックな感性だと思う。というか、日本人離れしたセンスなのかも。

ユーミンの歌詞は”都会的”って感じだけど、竹内の歌詞って、彼女にアメリカ留学の経験があるせいか、”アメリカン”っぽいもんなぁ。
松本伊代も初期は似たような路線だったが、伊代に対する世評の高さを考えれば、こちらももっと評価されてイイと思うが。

それにしても、何故に’60sへの回帰なのか。
当時、他に’60s志向でデビューしたのは、松本伊代とつちやかおりくらいだけど。
その辺が気になったので、色々と考えてみたのだが、アイドル歌謡の楽曲制作の場合、セオリーとして”トレンドの追求”というのがある。確かに、リリースする以上はヒットを狙うのが当然だから、流行に便乗するのも道理な話だ。

でも、有希子・かおりみたいな正統派に関しては、存在自体が流行に左右されないだけに、逆にトレンドを追及すると違和感が生じるのかもしれない。

「正統派は正統派らしく、楽曲もスタンダードがふさわしい」ということであり、たぶんセオリーとしても正しいと思う。それ故の「ティーンポップへの回帰」ではなかろうか。
ちなみに伊代の場合は、キャラの異色さを、スタンダードによって無難に中和した感が強く、有希子やかおりとは目的が全く異なると思う。(2000.6.16)

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