岡田有希子『Summer Beach』

岡田有希子『Summer Beach』
発売日 1985.04.17
作詞 尾崎亜美
作曲 尾崎亜美
編曲 松任谷正隆

モロ”聖子調”だが、2年目でこのアダルティな作風は異色

作曲は前作同様、尾崎亜美だが、今回は作詞も尾崎が兼任。
どうして夏目純が外れたのかは知らないが、やはり前作の出来映えがスタッフ陣にも不評だったのか?
それとも、松田聖子「天使のウィンク」の実績によって、尾崎のライティング能力が買われたのか?
いずれにせよ、歌詞については、わざわざ作家を替えただけの事はあって、前作よりも出来がイイのは確か。

主題は特に無く、「夏の渚で繰り広げられる恋愛模様」を淡々と綴っている感じで、まぁアイドル歌謡にはありがちなパターン。

 ♪Oh Summer Beach 小さな太陽ね あなたの瞳 熱い視線~
 ♪眠った振りしてパラソル越しに感じてるのよ~
 ♪Oh Summer Beach 睫毛の白い砂 指先ではらってくれた~
 ♪涙がこぼれる 「ごめんね」貴方を驚かせた~

結構リアルで大人びた雰囲気だが、前作よりはずっと明快な描写で冴えている。
ただこの作品、描写は判りやすいのだが、主人公と彼氏に纏わる因果関係・時間軸がちょっと判りにくい。

 ♪こんなに近くにいるのに何故 I miss you~ ♪去年の水着の跡も消えて行くから~ 
 ♪空がブロンズ色に染まる時間待ってて~ ♪終わった恋に さよなら言いたいの~

と云うことは、二人は出会ったばかりで、且つ、すぐ恋に落ちた事を示唆してるのだが、その直後に♪昨夜は「ごめんね」 私が少しいけない~ と続くので話がややこしくなる。
終わった恋とサヨナラした日から、ソッコーで一夜が明けてしまい、その間のストーリー展開が一切不明なまま、唐突に「ごめんね」と来るのだから。
メロディが途切れること無いまま、いきなりこの展開ってのは、いくらなんでも無茶だろう。

もっともコレに限らず、尾崎の歌詞は、大抵描写は優れていても、男女の因果関係がよく判らないのであるが。
つまり、曖昧なラブソングというのが、彼女の個性とも言えるわけだが、決して長所とは言えないだろう。
リスナーに深読みを強要させる歌詞って、結局は作者の一人よがりに過ぎないと思う。
ラストでは詞が振り出しに戻るのだが、恋愛が成就した事で、「ナンパ目的の熱い視線」から「愛情こもった熱い視線」へと、その意味合いが変化するという構成は見事だが。

曲は「A→B→C→A」という構成で、前作同様メジャー調だが、キーは低めで調性も変化しないし、前作よりもかなりオーソドックスな作り。
一応、構成上は頭サビだが、ややインパクトに欠けるメロディで、さほど”頭サビ然”とは感じられない。

しかし、Bメロでマイナー調が少々加味されたり、Cメロではリズムがブレイクするという仕掛けがあり、それ故の落差なのか、同じAメロなのに、締めのAメロはサビとして妙にしっくりくるのが不思議である。
取りたてて、アレンジがドラマティックに盛りあがるわけでもないのに。

振り出しに戻りつつ、意味合いが変化する歌詞内容に合わせて、ラストのAメロではキーをUPして締め括るのも上手い。全体としては、尾崎亜美らしく、ニューミュージック調のメロディで、アイドルっぽさは希薄。
アレンジも前作同様、松任谷正隆が担当しているが、前作以上に今回はイイ仕事をしていると思う。

コーラスとギター効果音主体という、リズム抜きのイントロからして、既にムード満点だし、コーラスで盛り上げて締め括る、エンディングも見事。
全編、曲に合わせて、ニューミュージック調を基盤としながらも、打ちこみ系のオカズは抜きにして、渋めに仕立てている。

これに季節感溢れる歌詞内容をも考慮して、ラテンテイストのパーカス・ピアノ・ストリングス・シンセ類を適宜導入しており、トータルではソフトロック・AOR(というよりフュージョン?)系のアダルティなサウンドに仕上がった。

クールなコーラスワークや上品なシンセハープの音色が、作品に清涼感を与えるアクセントになってるし、松任谷得意の間奏でのサックスソロも、夏らしさの演出に一役買っていると思う。
サウンド面は非常に洗練されており、なおかつ、夏らしい季節感を醸し出しながらもクールという、出色の完成度に仕上がった。

この作品、特にサウンド面がアダルティな仕上がりで、かなりアイドル離れしているが、素晴らしい出来栄えだと思う。
デビュー2年目の、それも正統派としては異例とも言える急成長だが、こうした速い展開の裏には、急いで有希子を松田聖子の後継者として擁立しようと目論む、事務所側の思惑があったように思う。

当時、聖子は神田正輝との婚約を発表しており、ひいては結婚休業をも示唆していたから、事務所にとって、聖子の後釜育成は必至で、内心焦ったのでは?

事実、この作品は、歌詞に聖子ほどの”リゾート感”には欠けるものの、サウンドに関しては「小麦色のマーメイド」にも通じる音作りで、モロに聖子調だし。

いささか突貫工事的だが、有希子もこうした過剰な期待に応えて、この大人歌を無難に歌いこなしているのだからサスガ!というか、器用なところを見せた。
聖子ですら、この手の作品にトライしたのは、デビュー3年目だったと言うのに。(2000.6.16)

追記
歌詞の中で、僕が散々文句を言ってた ♪Oh Summer Beach 昨夜は「ごめんね」 私が少しいけない~ の部分ですが、実はデモテープの段階では
♪Oh Summer Beach  心配しないでね  今はあなただけよ 昨日のケンカもごめんね~
という歌詞だったそうで、この「ごめんね」はケンカが原因だった事が判明しました。制作過程で肝心な部分が端折られたようです。

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