岡田有希子『リトル・プリンセス』

岡田有希子『リトル・プリンセス』
発売日 1984.07.18
作詞 竹内まりや
作曲 竹内まりや
編曲 大村雅朗

初期有希子作品は、60年代ティーンポップへの回帰

今回も作詞・作曲は竹内まりや。 前作と同じくデートが舞台で、竹内的には「ファースト・デイト」の続編なのかも。
しかし、今回は続編なだけあって(?)、「デートを重ねて、より一層相手を親密に想う」という主題なので、場数を踏んでいる分、緊張感はなく、かなり甘めの作品世界に仕上がっている。

 ♪ふたり分のブランチ抱えて いつもより少し早い待ち合わせをした遊園地~
 ♪お気に入りのグレイのTシャツお揃いで やけに今日は恋人気取りの私たち~
 ♪半分づつ食べるオレンジは恋の味 仲間達がうらやましそうな顔してる~

とにかく、「なんでもかんでも二人は一緒」である事を強調しており、その同一性でアツアツぶりを表現しているのだが、「ペアルック=仲良しカップル」という図式は、発売当時ですら、アナクロな事この上ないうえに、

 ♪私はいつでもあなただけのプリンセスよ~ ♪このまま手を取り おとぎの国へ連れてって~

甘いメルヘンで締め括っている点も、気恥ずかしいまでのアナクロニズムだ。

 ♪テスト明けまではしばらく会えないけど~  ♪心配しないで あなただけを想ってる~

ティーンらしく学生気質の描写もあって、一見、等身大っぽいけど、本質はリアリズム希薄のメルヘンである。
これこそアイドルポップスの典型であり、正統派としては正解なんだろうけど、それにしても時代錯誤だよなぁ。
しかも、今回の”ルンルン気分”は、前作のシリアスな心理描写と比べれば、やや平凡に感じるし。

曲は「A→B→A→B”→C」という前作とほぼ同じ構成で、その構成や曲調を鑑みれば、今回も基本は”60sなのだが、「ファースト~」と比べれば歌いやすい作りであり、しかも、今回はCメロをサビにして、歌謡曲っぽく”聴かせる”作りもしている。 どことなく「ラバーズ・コンチェルト」っぽいけど。

アレンジは前作の萩田光雄から、今回は大村雅朗に交替して、”60sな曲調に合わせて、フィル・スペクター風アレンジで応戦している。

別にタンバリンをシャカシャカ鳴らしてるわけではないが、バスを効かせたリズム隊といい、独特なテンポを刻みつづけるシンセ類・ギターといい、雰囲気としてはスペクターっぽい。
全体として低音強調傾向なので、主題の甘ったるさに相反して骨太なサウンドになってしまったが、そんなに悪いアレンジではない。

ただ、間奏でAメロをそのまま流用していたりと、仕掛けに乏しく手堅い・・・というか中途半端な印象なので、どうせなら、もっと大胆に”スペクターサウンド”を取り入れたほうが良かったのでは?
それこそ大瀧詠一みたいに、タンバリン等のパーカス系で目いっぱい装飾したり、コーラスワークにもっと趣向を凝らしたりして。 もっとも、発売当時は、この手の”スペクターサウンド”は「もう今更」って風潮だったが。

この作品、サウンドが’60sで、歌詞がアナクロ。 「ファースト・デイト」以上に古臭いし、出来としても凡庸に感じる。

しかし、見方を変えて、作品のテーマが「60年代の郷愁」だと考えれば、逆にコンセプチュアルな出来栄えと云える。 タイトルからして、60年代の「パイナップル・プリンセス」っぽいし。
そう言えば、「ファースト・デイト」にしたって、「コーヒー・デイト」「渚のデイト」的だもんなぁ。

そう考えると、有希子の初期作品は、コンセプトとして「”60s洋楽を彷彿とさせるアイドルポップス」というのがあったのかもしれない。 簡単に言えば「ティーンポップへの回帰」か。 弘田三枝子・中尾ミエ・伊藤ゆかりといった、あのライン。

そう認識すれば、この異様なまでのアナクロニズムも納得が行くし、竹内の起用も、ネームバリュー頼りのアドバルーンではない事がハッキリする。
というのも、竹内は元々が洋楽志向、それも”60s寄りの作風であり、有希子仕事は、竹内の本領が存分に発揮できるフィールドなわけで、彼女の起用は大正解なんである。
それだけに竹内も、有希子に対しては思い入れが強かったのでは?

そういう意味では、この「リトル・プリンセス」は、竹内ならではの力作ではあるな。
これでアレンジが、徹底して’60sサウンドを追及していれば、オールディーズ通の間で、後世に語り継がれる傑作に成り得たであろう。 アレンジを山下達郎に任せれば良かったのに。(2000.6.16)

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