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乱丁本の折り鶴

乱丁本の折り鶴

推理小説が何冊か続いたので、次はSFが読みたい気分になり、少し前から私の目を惹き始めたダン・シモンズ著「ハイペリオン」を求め、隣町の本屋に出掛けた。4部作からなるシリーズもので、いずれも結構分厚い上下巻のため合計8冊におよぶ長編、そしてそのシリーズの後日譚を描いた短編1冊が控えていることから、長丁場になりそうで二の足を踏んでいたのだが、長短編それぞれヒューゴー賞、ローカス賞、星雲賞を受賞していることと翻訳者が酒井昭伸氏なので面白い作品に間違いないと判断し、ハヤカワ文庫コーナーに急いだ。

運良く(後から思うと運悪く)シリーズ1作目にあたる「ハイペリオン」はあった。それ以外は2作目の「ハイペリオンの陥落」があるにはあったが、1作目とは違ってハヤカワ文庫の縦サイズが長くなる前の背の低いものだったので、同じシリーズ本が本棚でデコボコしてしまうのは避けたいので2作目は遠慮することにした。

手にした下巻を何気なくパラパラとめくっていくと、中程あたりに折り紙で鶴を折り始めたような三角形に変形したページが二箇所ほど現れた。

乱丁本である。
たまにページの四隅がきちんと裁断されずに、余分な紙が内側に折り畳まれているものは見かけるが、今回のような袋とじ状態になっているのは初めて見た。
しかも数ページ飛んだ落丁本でもある。読み始めてしまって、そこに差し掛かかるまで気が付かなかったら悲惨だった。買う前に気がついてよかったと思うものの、せっかくの読書気分に水を差され、また今度この本は読もう的なモードに落ち着き、近くにいた店員さんに不良品ですよと手渡し、本屋を後にした。

ここまでが先週の話。
1週間が経ち、気分を新たに同じ本屋に行くと、先週買えなかった本がちゃんと棚に並んでいるではないか。
返品して新しい下巻と入れ替えたんだな、それとも在庫があったのかなと頭の片隅にそんな思いが浮かんだが、あまり深くは考えず、直ぐにレジで精算を済ませ、その日の夕方から上巻を読み始めた。

実はこの本、巡礼の旅に集まった7人が、自己紹介も兼ねて巡礼地にまつわる自分のいきさつを披露するという、物語の中に物語が入れ子状態になっている枠物語の形式をとっており、それぞれに語られた話しが各ピースとなって、全体の物語が構成されているのだ。
上巻の目次を見ると、なるほど各章に1話ずつ巡礼行のサブタイトルが付いている。

語られる挿話の順が気になり、下巻を手に取り、目次を見た。
その際、ページの中程にちょっとした隙間が見えた。出版社の新刊案内の紙が挟まってできる膨らみだろうとその箇所をめくって、愕然とした。

目の前に、1週間前の折り鶴がいた。
数秒間、何が起こったかわからなかった。
体感時間ではもっと長く感じた初めの数秒間が過ぎ、次に我が目を疑い、あらためてよく見ると、折り鶴の裏側にハガキ大の紙が挟まっていること気づいた。
その紙にはこう書かれていた。

乱丁

さらに一瞬思考が止まったが、同時に返品せずに売り場に戻したんだ、という解釈が頭になだれ込んできた。

愕然としたが、理由が分かると一瞬憤慨してしまったが、たちまち呆れ返った。
著者名、書名、発行所名などが表示されている文庫本の最終ページに、「乱丁・落丁本はお取りかえいたします。」とあるが、購入者が出版社へ送れという意味なのだろうか。これは冗談だが、この本屋は右から左へ本を並べる人間工学を無視した意味不明な陳列ポリシーがあるので、一概には冗談とは言い切れないところもある。

すでに上巻を読み始めているので下巻に入る前に取り替えたいと思い、時間を作って翌日同じ本屋に向かった。
店員さん曰く、乱丁ということは聞いていたが、紛れて売り場に戻ってしまった、という説明だった。まあ、そうだろ、素直に考えればそれ以外に理由はない。
在庫が無いので出版社からの取り寄せになるので、暫くお待ちいただくことになりますがと言われたが、他の本屋で探すかまだ午前中なのでアマゾンに注文すれば明日届くので結構です、と丁重にお断りして返金処理となった。

その足で馴染みの深い地元の本屋に向かった。
先ほどの本屋より売場は狭いが、SFの品揃えは要所を押さえているので、きっとあるはず。
やっぱり、置いてあった。

今、下巻を読んでいます。

 


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