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原田知世『悲しいくらいほんとの話』

原田知世
発売日 1982.07.05
作詞 来生えつこ
作曲 来生たかお
編曲 星勝

凡作だが、楽曲制作の意向が反映されている歌詞は興味深い

原田知世のデビュー曲で、TVドラマ『セーラー服と機関銃』の主題歌。
映画版主題歌、薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」と全く同じスタッフ。
薬師丸の「セーラー服~」は、元々が来生たかおの自演予定で楽曲制作されたために、アイドルっぽさが非常に希薄な作品だったが、この「悲しいくらいほんとの話」は、最初から知世向けに制作されており、その点、割とアイドル的な作品に仕上がっている。
ただ、いくら知世が薬師丸に続く”角川アイドル第二弾”だとは言え、薬師丸の大ヒット映画をTVドラマで再現し、しかも、レコード制作まで同じ路線を踏襲するとは、素人目にも極めて安易な展開だと思うが。

曲はマイナー調。低音域から始まり、サビでは高音域で盛りあげる作りで、いかにも来生たかおらしい曲。
その点は「セーラー服~」と似ているが、今作はBメロが散漫なうえに、サビもそれほどキャッチーとは言えず、メロウなムード漂う上品な楽曲ではあるのだが、ヒットを狙うにはいささか弱いメロディだ。

アレンジは、所々リズムを変化させたりするものの、まぁコレといった特徴のない、ニューミュージックテイストで手堅い作りだ。
「セーラー服~」と比べたら、曲と合わせてサウンド面は凡庸で、可も無く不可も無く、といった按配。
それにしても、イントロで”ピコピコ”サウンドを使って、歌詞のSF感覚を表現するセンスは、どうにも安っぽい気がする。こうした安っぽさ・凡庸さが、映画版とTV版の違いという事なのか?

対して、歌詞はちょっと興味深い作りである。
 ♪まるで自分が不思議だんだん変化する~ ♪トランポリンのように体は浮いたまま~
 ♪ちょっと夢と現実区別がつかないの~ ♪スリルめいた毎日時間が飛んで行く~
と、少女が抱く恋心を、SFチックに描写するというのは、アイドル歌謡にはありがちなパターンだが、
 ♪恋の気分も知らないのに 心はざわざわ暴れるばかり~
 ♪恋の気配に揺られたまま 心のスピード驚くばかり~
主人公は戸惑っているばかりで、挙句の果てに
 ♪どこの誰だかあなた私の心触らないで~ ♪きっとどこかであなた私に暗示をかけている~
 ♪自分で自分が恐くなる~ ♪自分で自分がわからない~
肯定とも否定ともつかない感情でまとめている。
普通、SFチックな恋愛物だと、”ルンルン”気分で描写するパターンが多い中、こういったシリアス(というかナーバス)な展開は珍しいかも。

これはおそらく、知世のアイドルっぽさと、ドラマ『セーラー服~』のバイオレンス性(大した事はないが)を折衷した結果だと思われる。
 「とりあえずアイドルのデビュー曲なんだから、ラブソング歌わないと」
 「でも、『セーラー服と機関銃』なんだから、あんまり可愛いのもマズイでしょう」
という、相反する意見の妥協ではないかと。たぶん。
“悲しい”を冠したタイトルにも、そうしたスタッフの意向が反映されているように思えるし、原作とは無関係なSFを取り入れたのも、得体の知れないナーバスさを醸し出して、可愛らしさを掻き消すための手段かも。

この作品、歌詞を考察するといろいろ面白くはあるのだが、作品自体は凡作。
もっとも、これに限らず、スタッフの総意が折衷・妥協された着地点というのは、往々にしてつまらないものだと相場は決まっているが。(2000.2.25)

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