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原田知世『天国にいちばん近い島』

原田知世『天国にいちばん近い島』
発売日 1984.10.01
作詞 康珍化
作曲 林哲司
編曲 萩田光雄

ヒット狙いのあざとさを隠蔽するアレンジが見事

今回も同名の知世主演映画の主題歌。
前作と全く同じスタッフだが、極めてニューミュージック度の高かった前作に対し、今回は一転して歌謡曲っぽい作品に仕上がった。
これは前作「愛情物語」が前々作「時をかける少女」に比べてセールスが激減した結果を受けて、危機感を抱いたスタッフ陣が、売上を挽回すべくヒットを狙った商魂の顕れだと思う。
まぁ前作のセールスダウンは、楽曲の出来映えが云々よりも、映画本編の失敗が一番の要因だと思うけど。
で、今回は気合満々でヒットを狙った割には、作品の出来は今一つなのだ。

曲は「A→A”→B→サビ」という構成。
AA”メロは林哲司らしいメジャー調でニューミュージック風の旋律だが、サビではマイナーに転調し、非常にキャッチーでドメスティック。前半とは打って変わって、明らかに”売れ線”を意識した歌謡曲っぽいサビメロである。

トータルのメロディはそんなに悪くないのだが、展開は結構強引だろう。
おいしいサビメロを引き立てるための仕掛け、という作りでも無いように思うし。
しかも、サビは高音域なうえに、歌い上げて盛り上げるタイプの作りなので、知世のヴォーカルにもマッチしていないのだ。彼女のヴォーカルでは線が細すぎて、この手の高音で”聴かせる”タイプの曲には役不足。
太田裕美のように、ヴォーカルのか細さが”切なさ”として昇華されているわけでもないし。
それどころか、サビでの♪Let”s Stay Together~ の発音は凄い。物凄いジャパニーズ・イングリッシュ。
英語の発音のヒドさは、石川秀美「ゆれて湘南」の♪Hold Your Hand~ に匹敵するかも。
でも、知世の場合、他の歌ではそれほど英語の発音は悪くないので、やはりこのサビメロは彼女には難しかったのだろう。

歌詞は「時かけ」同様、タイトルの「天国にいちばん近い島」をフレーズとして押さえている。
 ♪恋した時みんな 出会う自分だけの神様~ と、自分の彼氏を神様に例えて、
 ♪誰よりも 天国にあなた いちばん近い島~
という具合に、タイトルコールで終結させているのだが、あまりしっくり来ない。
彼氏の懐の大きさを”島”に例えるという、その狙いもまぁ判らなくはないんだけど、いくらなんでも人間を島に置き換えるのは無理があると思うが。まさか「天国にいちばん近い人」とは書けないだろうけど。それじゃ発禁だ。

南洋の孤島である、ニューカレドニアのイメージも多少表現はしているが、無茶な締めくくりでぶち壊し。
全体として主題も今一つ不透明で、つかみ所が無い歌詞だ。
「愛情物語」でも、康の歌詞が作品の足を引っ張っていたが、今回も康の仕事は良くない。
同時期の小泉今日子には傑作ばかり提供しているし、決して女性アイドルが苦手なわけでも、スランプだったわけでも無いと思うが。なんだろ?康、文芸路線は不得手なのか?

かようにこの作品はイマイチなのだが、アレンジは優れている。
ニューカレドニアのゆったりとしたリゾート感覚を表現すべく、全体のテイストはフォーク調。
アコギの優しい音色に、ストリングス、穏やかなブラス、様々なキーボードが重なり、上品で癒し系(?)な音作りをしている。手堅いコーラスワークを含めて、派手な仕掛けは無いものの、逆に安心して聴く事が出来るサウンドだ。

曲・歌詞のいびつさを、上手くオブラートに包むようなアレンジで、まるで、強烈な酸性を優しいアルカリ性で中和しているような感じ。

この作品、曲・歌詞の両面で売れ線を狙いすぎて、気合が空回りした感が強いのだが、萩田のアレンジがそれらの欠点をカバーしていて、作品全体としては一応鑑賞に堪えうる仕上がりとなった。
赤子の手を捻るかの如く、若手の暴走を意図も容易く終結させる、見事なクロージング能力。さすがは御大。(2000.2.25)

 

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