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原田知世『どうしてますか』

原田知世『どうしてますか』
発売日 1986.03.05
作詞 田口俊
作曲 林哲司
編曲 大村雅朗

歌手・原田知世が目指した世界は「初期・松田聖子」

これまでのシングルは、全て自身が主演した映画・TVの主題歌だったが、今回はそうしたタイアップの呪縛から外れる。もっとも、CMとのタイアップではあるのだが、とりあえず、このシングルで彼女は本格的に歌手業に挑んだと言えよう。
そういう意味では、先輩の薬師丸ひろ子「あなたを・もっと・知りたくて」と同義のシングルである。
で、歌手業に本腰を入れるにあたって、薬師丸が選択したのは「筒美京平&松本隆」という超セメントな歌謡曲路線であったが、今回知世が選択したのは、ズバリ「初期・松田聖子」。

聖子が結婚休業していた85~86年は、主が居ないのをいい事に(?)、松本隆・財津和夫・呉田軽穂・大村雅朗といった聖子ブレーンの手により、フォロワー的楽曲が多数制作されたが、この「どうしてますか」も、その現象の一端であろう(新田恵利「恋のロープをほどかないで」なんかも、聖子ブレーン抜きで制作されたフォロワー楽曲である)。

おそらく、今回の楽曲制作に関しては、スタッフの間で、以下のようなやりとりがあったと推測される。

 「薬師丸が歌謡曲路線だったら、うちはロック・ニューミュージック調で対抗しようよ」
 「となると、やっぱユーミンにお願いするのが無難かなぁ」
 「でも、『時かけ』と同じ事してもしょうがないから、ここは違う作家で行きましょう」
 「じゃあユーミン繋がりで、聖子っぽい楽曲狙います? 今、聖子休んでるから結構穴場かも」
 「でも、松本隆は薬師丸と仕事しちゃってるから、作詞はユーミンと関わりが深い、田口俊なんてどう?」
 「いいね、新顔だし。 じゃあアレンジは聖子作品ではベテランの大村さんにお願いしましょう」
 「そうだね、新人とベテランで組ませりゃ、そこそこ斬新で手堅い”聖子ワールド”が再現出来るかも」
 「となると、作曲は? 財津和夫や尾崎亜美はいろんな人とやってるし、大滝詠一じゃ薬師丸っぽいし」
 「う~ん、それならいっそのこと林哲司ってのは? あんまし聖子の真似ばっかしても気が引けるしさ」
 「そだねー、じゃ今回はそれで決まり!」

たぶん。ここまでお手軽じゃ無かっただろうけど。またしても、誇大妄想極まりないが。
この邪推が本当だとしたら、あまりにも安易な発想だが、聖子も知世も「ユーミン作品との相性がイイ」という共通項があるので、「だったら知世が聖子チックな世界を目指しても違和感無いだろう」という論理は成り立つ。
そう考えると、今回は意外と手堅い戦略ではあるのか。ある意味正解とも言える。

実際、田口の歌詞は「赤いスィートピー」と「制服」を足して2で割ったような感じ。
「ポケットに去年の切符を見つけて、過ぎ去った恋を懐古する」という主題だが、
 ♪春色の去年の服~ ♪あの頃はあなたの駅~ ♪急行の通過待ちが~
といった、春色・駅・汽車(急行)というキーワードを用いて描写している点が「赤い~」っぽいし、
 ♪花吹雪舞う 陽炎の径~ ♪あなたを愛してた事 悩んでた事 やっと笑顔で思い出せる~
「桜の季節に大切だったものに気がつく」というくだりも、「制服」のシチュエーションと類似している。
オリジナリティには欠けるものの、康珍化による前三作の歌詞が凡庸だったせいで、今回の文学性溢れる歌詞は、結構清冽に感じる。

アレンジもやはり初期・聖子風で、ロック調をベースにしながらも、ストリングス・キーボード類の導入で、洗練された音作りをしているのが「チェリー・ブラッサム」「夏の扉」なんかと共通している。

ただ、今回はマドンナ「ライク・ア・ヴァージン」を彷彿とさせる、ギターのカッティングを取り入れている点が新機軸ではある。
イントロでのエレピとストリングスの絡み等、要所要所、可愛らしくはあるのだが、聖子作品に比べると、シンセ・キーボード類のオカズが少なく、全体のトーンとしては大人しめで、正直、物足りないアレンジである。

中山美穂「クローズ・アップ」等、この頃の大村作品はいずれもタイトな音作りで、アイドルらしい高揚感に欠けている。聖子作品との差別化を図る狙いがあったのかも知れないが、いささか地味すぎるのだ。
なんでだろ、当時バンドが流行ってたからか?

これらに対して、曲はそれほど聖子っぽさは無い。
基本はメジャー調だが、サビ前はマイナー調加味で、桜の季節特有の”爽やかさ”と”切なさ”が、メロディで上手く表現されている。

前作とは異なり、サビは比較的高音域で”突き抜ける”ような作りにしており、知世のヴォーカルも心地よく、聴いていて退屈しない。

しかし、いろいろな仕掛けはあるものの、全体のメロディは、さほどキャッチーとは言えないと思う。 それをカバーする意味でも、やっぱり、もうちょっとアレンジに色々とオカズを加えたほうが良かった。

この作品、聖子的楽曲でオリジナリティに欠けるうえに、アレンジも今一つパッとしない。
正直、傑作とは言い難いのだが、作品世界やメロディラインが知世の個性にはフィットしていて、一概に駄作とも言いきれないのだ。

そう言う意味では、かなり微妙な作品なのだが、「聖子≒知世」というスタッフの読みが正解だったのは確かだし、結果として、前作のニューミュージックっぽさと、次作のロックっぽさを上手くブリッジする作品になった。(2000.2.25)

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