原田知世『ときめきのアクシデント』

原田知世『ときめきのアクシデント』
発売日 1982.10.21
作詞 来生えつこ
作曲 来生たかお
編曲 星勝

来生姉弟が織り成す「擬似・松任谷由実」?

TVドラマ『ねらわれた学園』主題歌。前作同様、こちらも薬師丸ひろ子主演映画のTV版だ。
前作「悲しいくらいほんとの話」は、映画版主題歌「セーラー服と機関銃」を、同じスタッフで、TVナイズに縮小再生産したような趣きがあったが、今回もそれに近いモノがある。
映画版『ねらわれた学園』の主題歌は、松任谷由実「守ってあげたい」だったが、スタッフは何故か前作と同じ。
本家ユーミンに断られたのかどうかは知らないが、結論から言えば、今回はユーミンに代って(?)、来生姉弟がユーミン世界を再現しているかのようなのだ。

歌詞は前作同様、恋愛感情をSFチックに描写しているが、今回はナーバスさを醸し出すための手段ではなく、純粋に『ねらわれた学園』のテーマである”超能力バトル”に追従した結果である。
ただし、原作(というかドラマ自体)にバイオレンス性が低いため、今回はさほどナーバスさはない。

 ♪嵐が来るような予感がする~ ♪空想ゲームから抜け出せない~
 ♪風になってあなたの部屋に忍び込みたい~ ♪ときめきのアクシデント仕掛けたいの~
主人公が恋心に戸惑ってはいるのは前作と同じだが、今回は恋愛感情には肯定的で、その点は普通のアイドル歌謡っぽい。しかし、興味深いのは、来生えつ子が織り成す”ユーミン的世界観”である。
 ♪日向のガラスの街 モザイクの箱庭~ という情景描写もユーミンぽいが、それ以上に
 ♪あなたの心全部覗いてみたい気分 ハート型の鏡なら映せるかしら~
というくだりは、そのまんま「魔法の鏡」だろう。

さらに来生たかおの曲は、歌詞以上にユーミン的で、お馴染みの”来生性”が希薄なメロディだと思う。
まぁ来生たかおの作品は、ヒットしたものしか知らないんだけど。

今回、来生には珍しくメジャー調だが、河合奈保子「ストロータッチの恋」・西村知美「見えてますか、夢」・斉藤由貴「ORACION」など、メジャー調楽曲でもいくつかヒットを出している。
いずれもアクの無いシンプルな旋律だが、この「ときめきの~」は例外で、結構複雑な曲作りをしている。

マイナー加味は前述作品も同様だが、今回は音程のアップダウンが結構激しいうえに、普通思い付かないような、独特のコード進行・メロディ展開をしている。
サビ以降、その特徴が顕著で、上手く言葉で表現できないのだが、具体的にはユーミンの「中央フリーウェイ」「タワーサイド・メモリー」等に近いセンスなのだ。来生らしくない。

アレンジは前作に比べれば相当に凝っている。
“ピコピコ”したキーボードと、重量感あるベース・ピアノが織り成すイントロから、既にSF的世界観を表現していて、出だしから一気に作品世界に引き込まれる。
同じ”ピコピコ”でも、前作のような安っぽさはそれほど感じられず、ロマンティックでムード溢れるイントロに仕上がった。いずれにしても、SF感を”ピコピコ”で表現したがる星の発想は安易ではあるが。

その後も、スウィングする独特なベースラインを基調に、様々なキーボード類・ピアノ等が加わり、上品で厚みのあるサウンドを聴かせてくれる。
サウンドに関しては、曲・アレンジ、いずれの面でも問題は無く、傑作といえるだろう。

この作品、ユーミン的な歌詞・曲で、しかもSFチックな主題という、まるで”裏「時をかける少女」”といった趣きがある。まぁこちらのほうが早いリリースなのだから、「時かけ」こそ”裏「ときめきのアクシデント」”なんだけど。

じゃあ”プレ「時かけ」”か。ショートカットのジャケ写も、既に「時かけ」っぽいし。
そう、彼女は『ねらわれた学園』で、これまでロングヘアだった髪型をショートにしているのだが、この髪型の変化に関しては、昔から色々と考察されており、その結果、「ユニセックスの追求・先駆け」ということで一応の結論は出たようである。

しかし、知世の売りだし方針が、歌・ドラマの両面で、薬師丸ひろ子の安易な縮小再生産だったことを考えれば、彼女のショートカット攻勢はとりわけ深い意味なぞ無く、ただ単純に「ロングで売れなかったのだから、先輩の薬師丸ひろ子と同じショートにすれば売れるかも」という、これまた安易な再生産だったのではないかと思うが。(2000.2.25)

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