河合奈保子『愛してます』

河合奈保子『愛してます』
発売日 1980.12.10
作詞 伊藤アキラ
作曲 川口真
編曲 船山基紀

明らかに山口百恵を意識した「港町歌謡」

これまでのメジャー志向とは打って変わって、今回はドメスティックなマイナー調サウンド。
「ヤング・ボーイ」で引き出した、彼女の「真面目さ」「ひたむきさ」といったキャラクターの持ち味をより明確するために、マイナー路線を選択したのだろうか。

で、どうせマイナー調でやるなら山口百恵っぽいモノにしたかったのかどうかは知らないが、出来あがった作品は、なんとなく百恵っぽいのだ。
もしかしたら、川口真の起用も、百恵的サウンドの追及志向の顕れ?(川口は百恵のアレンジを数曲担当した経験アリ)

まずは曲だが、頭出しで始まるキャッチーな作りだけど、ややアナクロな印象。
とりわけ”百恵的”というわけではないが、ドメスティックなメロディはいかにも70年代的。
しかし、♪私も黙る・・・ヨコハマ~ など、リズムをブレイクさせるといった仕掛けを施している点は「赤い衝撃」を思わせる。

で、歌詞だけど、黄昏時の「ミナト横浜」を舞台に、「愛する男にどこまでも付いて行きます」といった、女の一途さを主題にしている。
彼女の持つ「真面目さ」「ひたむきさ」を、女の「一途さ」「忍耐」「苦渋」(?)として昇華しようとするあたり、まさに”百恵的”といえる。それにしても、デビュー1年目の新人アイドルにしては重たい(というか怖い)テーマだと思うが。

だいいち、彼女にフィットした世界じゃない。
♪海が鳴る~ とか♪ギリギリ愛してます~ といった、唐突で強引な嵌めこみも、ちょっとアイドル離れしてるし。
横須賀ではないが、同じ港町を舞台に選んだあたり、やっぱり百恵っぽいモノはやりたかったのだろう。

アレンジも「ミナト横浜」の雰囲気を醸し出すべく、いろいろと工夫している。
擬似カモメ鳴き声(?)を導入することで、無理やり港町情緒を表現し、フラメンコ・ギター的な弦楽器の調べが、横浜特有の異国情緒を、これまた強引に引き出そうとしている。
まぁカモメに関しては、船山氏は渡辺真知子「かもめが翔んだ日」で実績あるだけに効果テキメンだけど。

そういえば、作詞=伊藤アキラ・編曲=船山基紀というコンビは、「かもめが~」と全く同じだ。
確かに「港町歌謡」をやるには、当時のベストな布陣ではあったかも。

とまぁかように、「港町歌謡」としては合格点が付けられる、水準作品ではあるけれど、百恵的な世界観は奈保子自身にはあまりマッチせず、正直言って成功とは言い難い作品だ。
余談だが、アイドルのみならず、歌謡曲全般で横浜を舞台にした作品は多いが、どうして揃いも揃ってドメスティックだったり、アナクロだったりするのだろうか。

横浜といえば、普通は異国情緒に溢れたオシャレな街、というのが一般のイメージだろうに。
80年代に入っても、この「愛してます」を筆頭に、近藤真彦「ヨコハマ・チーク」、伊藤つかさ「横浜メルヘン」、柏原芳恵「待ちくたびれてヨコハマ」とかいろいろあるが、そのどれもがアナクロ。
ニューミュージック系なら、ユーミン「海を見ていた午後」とか、原由子「横浜レディ・ブルース」とか、オシャレな作品いろいろあるのに。なんでだろうか?(1999.12.17)

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