河合奈保子『ムーンライト・キッス』

河合奈保子『ムーンライト・キッス』
発売日 1981.09.01
作詞 松本礼児
作曲 馬飼野康二
編曲 竜崎孝路

サウンドがタイトルに全然マッチしていない失敗作

前作「スマイル・フォー・ミー」の大成功を受けて、今回も作曲は馬飼野康二。
一方で作詞とアレンジのスタッフが交代したのは、タイトルからも察しがつくように、秋リリースのロマンティック路線に、竜・大村コンビは不適との判断かも。

確かに、これまでの両者の仕事振りは、どちらかと言えばロマンティックというよりはアクティブ志向だったし。
こうしたスタッフを入れ替えての気合振り(?)にもかかわらず、この作品、「ムーンライト・キッス」というタイトルとは裏腹に、サウンド面で夜のムードが皆無なのだ。

まず曲だが、前作を踏襲したメジャー調で、のっけから陽気でハッピーなメロディラインだ。
サビ前の♪秋の気配の潮風が~ の部分でマイナーに転調し、明朗な旋律から一転し、哀愁味を醸し出しているのが最大特徴。
唯一、この部分でロマンティックな雰囲気が出ているものの、それ以外の箇所が極端に陽性メロディなので、月明かりのイメージを伝えるには全体にムード不足である。

アレンジも曲作りに追従しており、メジャー部分では思いっきりポップに仕立てている。
特にリズムが変化し、慌しく終わるエンディング部分は、ポップを通り越してコミカルですらある。

ただし、マイナーに転調する部分では、曲に合わせてしっとりとした作りにしている。
リズムをブレイクさせ、ピアノをメインに、パーカッションもカスタネットのみにした上品な仕上がり。

しかし、いくらここで頑張っても、全体を支配する明朗さはカバー出来ず。
やはり、このアレンジも”夜のムード”どころか、ポップ過ぎて時間軸が真っ昼間だ。

こうした、コンセプト無視のサウンド作りのツケ(というか皺寄せ)が、一気に作詞に回って来た感じだ。
サビで♪不思議な胸騒ぎ~ とか♪初めての口づけは優しく~ 等、月明かりの下で愛を交わす恥じらい(?)を綴ってはいるものの、バックコーラスを従えた躍動感溢れる歌唱・アレンジとはマッチせず、むしろ、やる気満々(何をだ)な感じだ。

歌い出しも、♪ねぇ どぉしたの なぜ? 黙っているの~ と、セリフ調でもどかしさを表現してはいるが、いささか取って付けたかのような感じだし。いやホントに、この「ねぇ」「なぜ?」には、誰もが一聴して違和感を感じると思う。う~ん、いくら作詞が努力しても、このサウンドじゃ「ムーンライト・キッス」を表現するのは難しいだろう。
まさか、詞先じゃないだろうな?

とまぁ、かようにコンセプトから逸脱した楽曲であり、明らかにコレは失敗作だ。
サウンドそのものはそんなに悪くないだけに残念。

それはそうと、奈保子がこの歌を歌う時は、フラメンコでもないのに、いつも小道具としてカスタネットを使っていた記憶があるが、アイドルの楽器系小道具のインパクトとしては、華原朋美のハーモニカに匹敵するかも。
小泉今日子のオカリナや、佐野量子のリコーダーには、そこまで突飛な印象はなかったのに。飛び道具か。(1999.12.17)

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