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原田知世『彼と彼女のソネット』

原田知世『彼と彼女のソネット』
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発売日 1987.07.01
作詞 C.Coper・R.Wargnier・日本語詞:大貫妙子
作曲 R.Musumarra
編曲 後藤次利

歌手・原田知世の代表作

知世初の洋楽カバーで、元歌はエルザ「T’en va pas」(通称「タンバパ」)。
エルザ盤はつい最近まで、ジーンズ「EDWIN」のCMで流れていたので、ご存知の方も多いと思う。
最初、「哀しみのアダージョ」なる邦題でリリースされたが、知世のカバーがヒットしたために、後に「彼と彼女のソネット」が副題として付けられた、という経歴がある。
ちなみに、この「タンバパ」、フランスでは80年代を代表するアイドル歌謡であり、1986年12月~1987年1月にかけてNo.1を記録。

曲はメジャーを基調としながらも、所々マイナー調加味で、非常に上品な楽曲である。
サビもなかなかキャッチーだが、全体的にムラ無く綺麗な旋律なのが凄い。
フレンチポップス全体の中でも、かなりの名曲として位置付けられると思う。
爽やかながらも切ない印象で、その点は「どうしてますか」と共通する雰囲気があるのだが、やはりこちらは完全に外人のセンス。 ちょっと日本人には難しい曲作りだと思う。
ただ、元歌はサビのリフレインが多く、トータルで5分を超える大作なのだが、知世盤はコンパクトにまとめており、4分強で収めている。 その点は、知世盤のほうが整理されていて、聴きやすい仕上がりである。

ゴッキーのアレンジは、ほぼ元歌を踏襲している。
ただし、サビ前までを、ベース抜きでピアノ・キーボード・アコギというシンプルな楽器編成にしているおかげで、元歌以上にフェミニンなムードが表現されているし、間奏のアレンジも、元歌以上に凝っているのは評価できる。

対して、大貫妙子による訳詞は、元歌とは全く異なる。
元歌は、自分を棄てて家を出て行く父親に対し、「パパ、行かないで」と懇願するという、珍しい主題なのだが、知世盤はごく普通の大人のラブソング。
 ♪今の私達をもしも何かに例えるなら 朝の霧の中で道をなくした旅人のよう~
 ♪ひとり離れた木の葉のような 心ささえたまま 乾いた風は私を運ぶ~
 ♪懐かしい白い指に触れても ほどけてゆく 遥かな愛の想い~
主題は凡庸だが、大貫妙子らしい、文学性に富んだ描写であるうえに、フランス語を敢えて使用しないこだわりも、この作品を格調高いものにしている。

しかし、この訳詞で面白いのは、2番のサビでの♪いつのまにか知ってる~ の部分。
元歌は♪Nuit tu n”en finis pas~ という歌詞なのだが、ヒアリングだと♪ヌィトゥノフィニパ~ と聞こえる。
「いつのまにか」と「ヌィトゥノフィニパ」。
なんだか空耳をもじったかのような嵌めこみで、そこだけちょっと笑ってしまう。

この作品、アレンジは元歌をそのまんま流用しているだけだし、訳詞も描写こそ素晴らしいが、元歌に比べれば平凡な主題。元歌本来の魅力に頼りすぎていて、さほど総意工夫に富んだカバー盤とは言えない。

早い話、企画の勝利なのだが、上品な楽曲・格調高い歌詞は、いずれも知世の個性にはマッチしている。
「地下鉄のザジ」以来、水面下で追求して来たフレンチ志向の集大成とも言える作品だし、数年前にも、トーレ・ヨハンソンによるリテイク盤がリリースされたりと、彼女にとっては代表作であると言えよう。

フレンチポップスのカバー盤ヒットという意味では、サーカス「Mr.サマータイム」以来だし、2000年2月現在、最新のフレンチカバーのヒット曲でもある。もう、フレンチのカバーヒットは出ないのだろうか?(2000.2.25)

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