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河合奈保子『ヤング・ボーイ』

河合奈保子『ヤング・ボーイ』
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発売日 1980.08.25
作詞 竜真知子
作曲 水谷公生
編曲 船山基紀

曲作りは80年代アイドル歌謡の原型

前作「大きな森の小さなお家」では、彼女の「顔は童顔で愛らしいが、体は肉感的」という大場久美子なビジュアルにこだわり、麻丘めぐみ的なロリータ手法で作品制作(主に歌詞の面で)を試みて、見事失敗に終わった。

対してこの「ヤング・ボーイ」では、彼女の「明朗快活だが至って生真面目」というキャラクター面にこだわった作品制作をしているのが特徴。
確かに、当時のアイドルはTVの歌番組を主戦場にした活動がメインだったから、ビジュアル以上に生地のキャラクターまでをも如実に視聴者に伝えてしまうTVの特性を有効活用するには、この路線のほうがベターだ。

明菜や森高ぐらいに、ビジュアルにこだわれば話は別だが、そうでなくとも、奈保子のキャラは”無意識過剰”と称されるほど、ツブシが効かない磐石ぶりだし。

まずは曲だが、前半は彼女の「生真面目さ」「ひたむきさ」を表現すべく、マイナー調の低音域でシリアスなメロディだ。
しかし、サビからは一転して、彼女の「明るさ」「爽やかさ」を表現すべく、メジャー調の高音域で抜けるようなメロディ。この転調が、いささか強引な気がしなくもないけど、「一粒で二度おいしい」作りではあるか。

こうした低音域の歌い出しで始まり、サビへ向かうにしたがって高音域で盛り上げるという曲作りは、80年代アイドル歌謡の基本形である。おそらく、この「ヤング・ボーイ」や松田聖子の「青い珊瑚礁」あたりが先駆けだろう。

そういう意味では、この歌、80年代アイドル歌謡の原型と言えるかも。
アレンジもこのメロディラインに追従した作りだ。
前半ではストリングスを効果的に導入し、「ひたむきさ」を表現すべく、緊張感を与えている。
♪息を切らして風の中~ の部分や、♪胸がキュンとなるの~
で、リズムをブレイクさせてるのも、同様の意図だろう。
サビでは転調するだけでなく、コーラスも加え、リズムセクションまで変化させて、「爽やかさ」を強調している。
前作に比べれば仕掛けも多く、ハードながらも幾分凝った仕上がり。

歌詞は意外と個性に欠ける、凡庸なラブソングだ。
まぁ前半では秘めたる恋愛感情を、後半では恋の喜びをストレートに表現していて、短調・長調の混成な曲作りにはマッチしているけど。

ただ、2番の「初デートに対する緊張感」をシリアスなメロディに乗せて綴る、というコンセプトは、後の岡田有希子「ファースト・デイト」を想わせる。
後半メジャーに転調するメロディ展開、次第に恋の喜びを歌い上げる歌詞展開も共通しているし。

こうした彼女のキャラクター重視で作品づくり(主にサウンド面で)をした結果、功を奏して18万枚の初ヒットに。
ようやく彼女もブレイクし、同期の松田聖子・三原順子・岩崎良美に肩を並べる人気を博した。(1999.12.17)

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