奥村チヨ『ごめんネ…ジロー』

奥村チヨ『ごめんネ…ジロー』
発売日 1965.10.01
作詞 多木比佐夫
作曲 津野陽二
編曲 津野陽二

ある意味、和製フレンチポップスの正解とも云える作品

“和製シルヴィ・バルタン”をキャッチフレーズに掲げ、昭和40年、直球勝負にバルタンのカバー「私を愛して」でデビューした奥村チヨであるが、第1弾は小ヒットに留まり、オリジナル作品となる、第2弾「ごめんネ・・・ジロー」でブレイクを果たした。

デビュー時において、衣装・髪型等、何から何までバルタンもどきだったビジュアル面も、「ごめんネ~」のジャケ写を見る限りでは、オリジナルなだけあって幾分独自性が出ている。
それでも、楽曲の作風としては”和製バルタン”のコンセプトを多少引きずってはいるのだが。

まず曲は「A→A”→B→A””」という珍しい構成で、全編メジャー調のバラードタッチ。
Aメロを軸にした同系のバリエーションが続くので、おいしいサビメロを設けて”聴かせる”構成では無いものの、A系統全てに♪ごめんネ…ジロー~ のタイトルコールが共通していて(2番は♪愛して…ジロー~だが)、これが結構インパクトあるので、全編キャッチーな作りではある。

しかも、各バリエーション毎に微妙な変化を与えて、曲の進行に伴い、徐々に盛りあがる構成となっているうえに、2番ではキーもUPするし。
旋律自体にフレンチっぽさは余り感じないものの、テンポや調性、♪ごめんネ…ジロー~ 部分でリズムをブレイクさせるくだりなんかは、前作「私を~」をベースにはしてるかも。
岸洋子「夜明けの歌」っぽい雰囲気もあるが。

歌詞の主題は、愛しいジローへの求愛であるが、コレといったストーリー展開は無く、ただ闇雲にラブコールを送ってるだけ。
主題は前作「私を~」と同じなのだが、♪ごめんネ…ジロー~ のタイトルコールが何度と無く出てくるし、描写は至って歌謡曲調で、かなり泥臭い印象。彼氏の名前がジローってのも、これまた垢抜けないし。
「ごめんネ…ジロー」というゴロは絶妙だけど。
しかし、過剰なタイトルコール&求愛の連呼という構成は、かなり覚えやすくてキャッチーなのも事実で、それが今回ヒットした要因だろう。

当時18才の奥村にとっては、いささか大人びた歌詞だが、「恋の奴隷」以降顕著になる、例の”お色気唱法”はまだ萌芽しておらず、可愛らしく清冽に歌い上げていて、そのギャップが一種の魅力になっていると思う。
歌唱力もあるし滑舌も明瞭なので、聴いていて陳腐な感じはしないし。
ただ♪ごめんネ~ での鼻に掛かった発声テクは、既に相当色っぽくはある。

アレンジはドラム・ベース・チェンバロを主体に、スウィングするムーディーなテンポを緩やかに刻み、コレにサックス・ピアノ・アコーディオン等がソフトに絡む按配。
どことなく「私を~」っぽい雰囲気もあって、曲以上にアレンジがフレンチっぽい印象で、当時の歌謡曲にしては、結構オシャレなサウンドだと思う。

しかも、所々リズムをブレイクさせたり、1番と2番で多少旋律を変えたりと、趣向も凝らしている。
ただ、イントロでのトランペットや、エンディングでの♪ジャン!(なんの楽器?)は、本編と無関係な楽器なので、ちょっと唐突な気がするけど。

この作品、サウンドや主題面で明かにバルタンを意識した向きがある一方、詩の描写やタイトル等では、相反して泥臭い雰囲気が漂う。
つまり、フレンチポップス的な洗練と、歌謡曲のダサさが絶妙にブレンドされた感じで、これこそ、奥村が標榜した”和製バルタン”の正解という気がする。
単に本家をカバーするよりは、こういう形のオリジナルで勝負するほうが、間違い無く高度なアプローチだと思うし。

考えてみたら、アイドルが(奥村も当時はアイドルでしょう)フレンチポップス風サウンドに挑んでヒットしたのは、おそらくコレが最初じゃないかなぁ。カバー盤では色々あったけど、オリジナルでは、たぶん。
そういう意味では、”渋谷系”の始祖とも言えるのか?作り手にはそんな意識なぞ無かっただろうが。
単なるトレンドの便乗だったハズだし(当時、フレンチはごく普通に日本でヒットしていたから)。1965年作品。(2000.8.7)

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