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河合奈保子『夏のヒロイン』

河合奈保子『夏のヒロイン』
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発売日 1982.06.10
作詞 竜真知子
作曲 馬飼野康二
編曲 若草恵

河合奈保子の最高傑作

アップテンポのメジャー調サウンドに乗せて、恋の喜びを表現するというコンセプトは、1年前の「スマイル・フォー・ミー」と共通している。スタッフも作詞・作曲は「スマイル~」と同じ布陣だし。

しかし今回、アレンジは大村雅朗ではなく、若草恵が担当。
「スマイル~」は傑作ではあったが、正直なところ、大村のエアプレイ系アレンジによって、松田聖子の二番煎じ的な印象は否めなかった。
そこで今回は、奈保子アレンジではお馴染みとなった若草を連続起用することで、オリジナリティを追求した形となった。

曲は「スマイル~」同様のメジャー調。
ただし、「スマイル~」や「ラブレター」ほどの高音域ではなく、中・低音域での曲作りをしている。
今回はグルーブ感の発揮よりも、奈保子自身が歌いやすいようキー設定する事を優先したのだろう。
確かに「スマイル~」や「ラブレター」よりも符割りの細かいメロディで、難易度高いし。

アレンジもこうしたメロディの細かさを、サンバのリズムに乗せることで、見事な高揚感を醸し出すことに成功した。彼女の明朗なキャラクターも、サンバのムードにマッチしたし。
その点は、榊原郁恵の「ラブジャックサマー」あたりがモチーフか?
それはともかく、アレンジ自体、リズムセクションから細密で、全体としてもかなり丁寧な仕上がりだ。

お約束のサンバホイッスルの導入、躍動的なボンゴ・タンバリンの響き、快活なブラス、陽気なギター、情熱的なピアノの旋律などなど、ラテンテイスト満載で濃厚な味付け。
間奏のキーボードがいささか突飛な感じはするけど、その点に眼を瞑れば文句無しだ。

歌詞もおそらく最初にタイトルが決まっていたのだろうが、サビで見事にタイトルを嵌めている。
特にコーラスとの掛け合いで、極めてアクティブに仕上げているのはサスガ。
♪夏のヒロインに (チャンスチャンス) きっとなれる ~ ラテンなリズムとの相乗効果で、完璧な出来映え。

全編に渡って、何のてらいも無く恋の喜びを全面肯定しているが、そこが派手なサウンドに負けない”圧力”になっているので、厭味な感じが全然しない。
ただ、2番の歌詞が今一つ、キャッチーさに欠けるのが、どうにも息切れぽくって難点だが。

奈保子の歌唱もノリノリで、リズム感に富んでいながら音程正しく、発音も丁寧なのはスゴイ!
「ラブレター」のようなグルーブ感には欠けるが、逆に安定した歌唱が楽しめる。
しかし、唯一の欠点が ♪チャンスチャンス~ の部分。
どうしても♪チャースチャース と、おかしな発音をしてしまうのはしょうがないのか?
全体の歌唱が正確なだけに、その点が結構気になるのだが。

まぁアラを探せばいろいろと欠点は出てくるが、そうした瑣末な問題点なぞ一聴する分には不問にしてしまう、見事なサンバ歌謡に仕上がった。聖子の二番煎じに陥ることなく、今回はオリジナリティに富んだ傑作だ。
彼女イメージにもフィットしており、最高傑作といえるだろう。(1999.12.17)

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