中山美穂『JINGI・愛してもらいます』

中山美穂『JINGI・愛してもらいます』
発売日 1986.07.15
作詞 松本隆
作曲 小室哲也
編曲 大村雅朗

意欲作だが、結果としてはツッパリ歌謡の”徒花”

作曲に小室哲也が起用された。
渡辺美里「MY REVOLUTION」の大ヒットを受けて、一躍コンポーザーとしての注目が集まった直後の作品。
それも相手が、売りだし中のトップアイドルとくれば、否が応にも力は入ろう。
そういう意味では、TKにとって重要な作品だったハズ。

で、曲だが、「MY~」同様のメジャー系。
しかし、「MY~」で見られた斬新さ・TKらしさはあまり感じられない、オーソドックスな曲だ。
でも、音域のアップダウンが激しく、リズムを強調した作りであるのは、お馴染みの”コムロ調”ではあるかも。

アレンジはTKではなく、大村雅朗。
手弾き系楽器で音作りをしているものの、シンセ類の多用で、全体としてはテクノポップ調。
このシンセがかなり凝っていて、賑やかなリズムセクションと相俟って、どこかコミカルなサウンドに仕上がった。
このアレンジ、他人任せであるにもかかわらず、機械的な音作りが曲以上に”コムロ的”なのが不思議。
まさか当時は、サウンド作りで主導権持つほどの権力は、哲にぃさんには無かっただろうし。

歌詞は「BE-BOP-HIGHSCHOOL」の系譜で、”ツッパリ”がテーマ。
もう”ツッパリ”は卒業したかと思いきや、いきなりの回帰。
この歌のリリースは、前作との間隔が2ヶ月で、次作との間隔が僅か1ヶ月。
緊急リリースの感が強いが、タイアップとか一切無かったように記憶している。
となると、これは彼女に”ツッパリテイスト”を強く求める、熱心なファンへのサービス?
そう考えると、この”ツッパリ”への回帰は納得がいく。

で、内容もサービス精神たっぷりで、”これでツッパリは見納め!””在庫一掃処分!”と言わんばかりの現品大放出ぶりだ。今回も「BE-BOP~」同様、自分はツッパリじゃなくて、相手がツッパリ。
ココでのツッパリ君は、「BE-BOP~」の不良とは違って、
 ♪月面で宙返りした顔~ ♪眼差しをナイフみたいに鋭くして~ ♪眉間には縦皺深く刻み込んで~
といった具合に、問答無用のヤンキーである。

一方、主人公も「BE-BOP~」とは異なり、母性的ではなく、学園のマドンナ(?)的な大姉御。
 ♪腕ずくで抱き寄せるならひっぱたくから~ ♪コラ少年聞いてるの~
相当気が強いが、美穂のキャラとはまぁまぁ合ってるかも。
テーマは「斜に構えて強引に自分を口説くヤンキーに対する戒め」。中森明菜「十戒」以上の手厳しさ。

しかし、そんなにおっかなくは無く、結構コミカルに描いている。
サウンドのコミカルさも含めて、「BE-BOP~」以上に、こっちのほうがマンガ『BE-BOP~』に近い雰囲気。

それにしても、このベタベタなツッパリ描写。
ここまであからさまに”ツッパリ”をテーマにした女性アイドル作品は、これがラストだろう。
しかし、あくまでも明菜的”ツッパリ歌謡”に属する事を避けて、独自の”ツッパリ歌謡”を構築しようと模索した松本。意欲は買いたいし、作品の出来も上々なのだが、いかんせん時代が遅すぎた。
歌詞でも言ってるように、当時既に ♪ツッパリは時代遅れの見本~ だったのだ。

結果、コテコテな松本流”ツッパリ歌謡”は定着することなく、松本自身、後の立花理佐などでは、明菜的”ツッパリ歌謡”に改宗を余儀なくされる。「BE-BOP~」がツッパリ歌謡の”外伝”なら、こっちは”徒花”といった感じだ。(1999.12.28)

追記
「ツッパリへの回帰?」とか云ってたら、実はこれ、映画『BE-BOP HIGHSCHOOL』のテーマソングでした。

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