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中山美穂『「C」』

中山美穂
発売日 1985.06.21
作詞 松本隆
作曲 筒美京平
編曲 萩田光雄

松本隆が初めて本格的に手掛けた”性典ソング”

中山美穂のデビュー曲。なんでも彼女の歌手デビューに関しては、松本隆が並々ならぬ意欲を見せたらしい。
松本自ら、わざわざ筒美本人の下へ作曲の依頼に押しかけたほど。
でも、彼のそうした気持は、なんとなく判る気がする。
というのも、美穂はデビュー前からドラマ『毎度おさわがせします』でブレイク済みで、最初からA級扱いだったから、作詞家にとっては”勝算アリ”のおいしい仕事だったハズ。

しかし、そうした算段以上に、美穂のキャラクターは、松本にとって魅力的に映ったと思う。
これまで彼が手掛けた80年代の女性アイドルといえば、松田聖子・薬師丸ひろ子・斉藤由貴・・・・
どちらかといえば、文学チックな作風が要求されるラインナップだ。
まぁ歌謡曲らしからぬ文学性が松本の売りだから、当然なのだが。

しかし、こうして仕事をこなす一方、松本にも「今風の不良キャラに楽曲提供して、新境地を開拓したい!」という、職業作家としての欲求は当然あったと思うのだ。
これまでにも、スターボーに”不良ソング”を作ったりしたけど、やはりあれはジャンルの異なるキワモノだろうし、”ブッ飛び”小泉今日子にも楽曲提供したが、何故か”ブッ飛び路線”外ばかり廻って来るし。(「迷宮のアンドローラ」B面、「DUNK」は除く)そこに来て美穂の出現!そりゃあ力が入ろうというモノだ。

で、松本隆・入魂の一作となったこの作品だが、歌詞は”ツッパリ”というより、『毎度~』の内容に合わせた”性典モノ”だ。タイトルからしてそのまんま。沖田浩之か。

主題は「夜の海辺で初体験を迎えた少女の、歓びと不安が交錯した微妙な心理」。
結構キワドイ内容なのだが、そこは松本御大。
トパーズ・水晶・ほうき星・ガラス等、得意のヒカリモノを駆使して、非常に抽象的に、かつロマンティックに描写しているのは見事!
「C」最中(?)の不安定な心理を、♪さそり座の赤い星 涙で曇る~ と表現するあたりなど、ジャンルを変えても相変わらずの仕事っぷりだ。

曲はマイナー調でアップテンポ。
所々リズムを変化させていて、ノリ易くしてはいるものの、全体的に符割りが細かく、アイドルのデビュー曲としては結構難易度が高い。 特に♪抱きしめて ささやいて~ の部分はかなりキツい。
美穂はディスクですら、ココはまともに歌えていない。でも、新人アイドルじゃしょうがないかも。
アレンジは独特で、且つ相当に凝っている。
おそらく全体的な骨組みは、ローラ・ブラニガン「セルフ・コントロール」あたりを参考にしていると思うのだが、リズムセクションはスネアを利かせた打ちこみ系で、「セルフ~」と比べるとかなりスピーディーだ。
適宜シンセ類も多用していて、「セルフ~」よりは軽めの仕上がり。

さらに、細かいギターのカッティングなどの導入で、元歌には無い”ファンク調”を加味しており、結構オリジナリティに富んでいる。
しかも、浜辺のシチュエーションを表現すべく、所々で「サーッ」という”擬似さざ波(?)”を導入したりと、仕掛けも多い充実ぶり。

この作品は、キワドイ主題をオブラートに包んで表現しているのもさることながら、主題をスピーディーで独特なサウンドに乗せたおかげで、そのキワドさが一層カムフラージュされた感もある。
結果、『毎度~』で築いたイメージを逸脱することなく、かといって没却もせず、絶妙なバランス感覚で「C」を表現した成功作となった。(1999.12.28)

 


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