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中山美穂『「派手!!!」』

中山美穂『「派手!!!」』
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発売日 1987.03.18
作詞 松本隆
作曲 筒美京平
編曲 船山基紀

大きな犠牲の上に成り立つ、見事なサウンド

前作「WAKU WAKU させて」は、フジテレビ系ドラマ『なまいき盛り』の主題歌で、今回はTBS系ドラマ『ママはアイドル』の主題歌。どちらも美穂の主演で連続モノだ。
間に日本テレビ系『セーラー服反逆同盟』を挟んで、3クール続けて主演を張って、しかも、自分で主題歌までこなすという活躍ぶり。いかに当時の美穂人気が凄かったを、如実に物語っている。

それはともかく、まずは歌詞。主題は「不相応に”イイかっこしぃ”な彼氏の暴走をたしなめる」といった内容。
ドラマとは全く無関係なテーマだ。しかし、ドラマ主題歌ということを意識したのか、結構企画色の強い仕上がり。
タイトルからして「派手!!!」と来ている。なんなんだ、この( 「 」 )( !!! )は。
シブがき隊か? うしろゆびさされ組か?詞の描写もかなりコミカルだし。
秋元康っぽい作風なのが気になるが、同じドラマ主題歌でも「WAKU~」よりは断然面白い出来ではある。

曲は”歌唱重視”ではなく、完全に”サウンド志向”で作られている。
「ツイてるね~」「WAKU~」とは異なり、メジャー調。
全体の構成は「A→B→A→B”→サビ」となっているのだが、サビ以外はそんなにキャッチーではない。
とてもリズミカルで、ノリ易くはしているが、非常に独特な旋律だ。
符割りが細かい、音域の移動が激しい、というよりも、音程そのものが取りづらい作りになっている。
ノリはいいが、歌い易いメロディではないのだ。
しかし、サビメロは凄くキャッチーで、おいしいサビを引き立てるかのような曲作りだ。
アレンジは、さすがに”サウンド偏重”で曲作りをしただけの事はあって、ものすごく充実している。
「ツイてるね ノッてるね」同様、打ちこみ系のファンキーなサウンドだ。
快活なリズムセクション、ブラス系・シンセ類の多用、目いっぱい力の入った女性コーラス、思い付く限り導入したかのような、パーカス系のオカズなどなど、文字通り”派手!!!”な仕上がり。
サウンドの完成度では、「WAKU~」と双璧を成す出来映えかも。

で、こうした”歌い手不在(?)”なサウンド作りをした結果、歌唱はイマイチ。
A・B・B”メロの部分は、ディスクで聴いても、全然上手く歌えていない。
もし「採譜してみろ」とか言われても、絶対出来なさそうな、微妙な音のハズし方。
♪カー・ラジオに合わせてる 音符がほら風に舞うわ~ とか言ってるけど、「おいおい、自分だろ自分!」って感じだ。
しかも、曲が進行していくにしたがって、だんだん息絶え絶えになっているのが不思議。
特に2番のサビに至ってはボロボロで、とてもサビを引き立てるどころの騒ぎではない。
ディスクなのに、なんでだろうか? 一発録りか?生録りか?
まぁいずれにしても、これはホントに難しいメロディだろう。彼女には同情します。

この作品、完全なサウンド重視型で楽曲制作されていて、非常にクウォリティの高いサウンドを聴かせてくれるが、その見事さも、歌唱の代償で成立している事を考えれば、素直には評価できないだろう。
傑作ではあるが、ちょっと美穂には難しい作品だった。
「メロディ&歌唱」を取るか、「メロディ&アレンジ」を取るかで、意外と評価・好き嫌いが分かれる作品かもしれない。(1999.12.28)

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