作詞 田口俊
作曲 小室哲也
編曲 船山基紀
歌謡界では珍しい、ラテンとテクノの異種交配
これまで美穂の楽曲制作において、陰日向で主導してきた松本隆が、この作品から完全に外れる。
“松本学校”を卒業した第一弾の作詞は、田口俊が起用された。
過去には原田知世「どうしてますか」のヒットがあったくらいで(たぶん)、ソレ以外は余り目立った実績の無い新進作家を起用するとは、”ブレーン・松本隆”が抜けた大事な時期であるにもかかわらず、思い切った采配である。
しかし、この作品と、同時期の南野陽子「パンドラの恋人」が成功したおかげで、一躍田口は注目を集める結果となった。
で、その歌詞だが、「夏の水辺(海?プール?)で、プレイボーイとの恋の駆け引きを楽しむイイ女」が主題。
「ツイてるね ノッてるね」とも共通するテーマだが、むしろ中森明菜「サザン・ウィンド」に近いかも。
リゾートっぽさは希薄だけど。当時の美穂にしては不相応に大人びた内容だが、
♪ばかにしないで子供じゃない~ と、”背伸び感”を強調する事で、違和感を相殺している。
まぁ平たく言えば、それほど見るべき点は無い、割りとありがちな歌詞なんだけど。
作曲には、再び小室哲也が起用された。
「JINGI・愛してもらいます」では、曲作りの面で、正直それほどTKらしさが開花していなかったのだが、1年経って今回は、ようやくあの独特な”コムロ節”が堪能できる仕上がりとなった。
で、その曲だが、メジャーとマイナーが複雑に絡み合ったメロディだ。
後の、篠原涼子「恋しさと 切なさと 心強さと」にも通じる曲作りで、いかにもTKっぽい。
頭サビで始まるのも「恋しさと~」と共通しているし、音程の上下移動が慌しいのも”コムロ的”。
ただしキー設定は、「恋しさと~」に比べると、さすがに美穂に合わせて低めにしている。
アレンジはカリビアン・テイスト。
おそらく、今回の楽曲制作においては、先にサウンド作りをしてから歌詞を乗せたものと思われるが(たぶん哲にぃさんは、詞先で曲作りできないだろう)、曲自体にラテンっぽさは無いのに、いきなりのカリビアン。
何故?かなり強引な発想だ。主題だけ先に決まっていたのか?
特にAメロ部分は、リズムそのものをカリブ風に変化させてまでの強行手段。
全体的にも、ラテンテイスト溢れるパーカスのオカズ、独特なブラス系などで、カリブっぽさを強調。
まぁ嵌まっているのが凄いけど。
しかし、こうしたサウンド作りを、手引き系楽器ではなく、打ちこみ系・シンセ類主体でこなしているのが面白い。
結果、”ラテン・テクノ歌謡(?)”とでも呼ぶべき、興味深い作品に仕上がった。
テクノとラテンの融合というのは、ヨーロッパやUKモノではいくらか存在したけど、日本の歌謡曲では結構珍しいと思う。でも、聴いてる分には違和感ないし、まぁまぁの出来映えでしょうか。
それにしてもこの作品、「JINGI・愛してもらいます」同様、TKアレンジでは無いのに、またしてもテクノ調だ。
美穂でテクノ系楽曲になると、哲にぃさんに御鉢が廻ってくるような感じ。
その人選は正しいけど、あくまでも曲しか任せてもらえないのが不思議だ。
テクノ系のサウンド作りをするなら、TKがアレンジも手掛けたほうがスッキリすると思うが。(1999.12.28)

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