中山美穂『WAKU WAKUさせて』

中山美穂『WAKU WAKU させて』
発売日 1986.12.10
作詞 松本隆
作曲 筒美京平
編曲 船山基紀

サウンドの完成度に対して、歌詞の凡庸さがイタい作品

前項で述べたように、「ツイてるね ノッてるね」で完成された”打ちこみ系ファンキーサウンド”を、ここではユーロビートを下敷きに再構築している。 モチーフとなった作品は、ラナ・ベレー「ピストル・イン・マイ・ポケット」。

まずは曲だが、前作同様にアップテンポなマイナー調だ。
曲自体に洋楽っぽさは、あまり感じられない。 むしろ、ドメスティックと言ってもいい。
彼女には珍しい、頭サビで始まる曲なので、余計に”歌謡曲然”と感じるのかもしれないが。
リズムも「C」「ツイてるね~」とは根本的に異なり、やはりユーロビートに乗り易いようなメロディに仕立てている。

アレンジは相当に凝っている。
打ちこみ系なのは当然だが、SEの多用、パーカスの多彩なオカズなどが加わり、細密なリズムセクションだ。
シンセ類もふんだんに取り入れ、コーラスワークも丁寧だし、とにかく趣向を凝らしている。

しかし、全体をハデハデにしているのではなく、パート毎にカラーを変えているのがポイント。
聴き続けているうちに、次から次へといろんな仕掛けが飛び出してくる感じだ。
「ディスコで踊りつづける」という、歌詞の内容とは裏腹に、むしろ遊園地・ゲーム感覚。
その点は、小泉今日子「迷宮のアンドローラ」に通じるものがある。

そういえば、全く同じ作家陣だ。 とにかく、全くリスナーを退屈させない、見事なサウンド作りだ。

歌詞は、「何もかも忘れて、一晩中踊ろうよ!」というのがテーマ。
♪頭ん中Upside-down 空っぽに消去して~ とか言ってるけど、ホントに無内容だ。見事な空っぽぶり。
この作品世界の”どうでも良さ”加減は、「ツイてるね~」以上だろう。
まぁこの作品はサウンド重視で作られたのだろうから、歌詞がメロディに嵌まっていて、聴覚の邪魔にならなければ、それでイイのだろうけど。
その点も「迷宮の~」と同じだが、あっちのほうがコズミックでSFチックだった分、個性はあった。
それに対して、コレはただ幼稚で凡庸なだけ。

かようにこの作品は、見事な”ユーロビート歌謡”の傑作となった。
前作以上の出来栄えで、サウンド面では美穂の真骨頂とも言える完成度だ。
これで歌詞にもっと内容・個性があれば、パーフェクトだった。
松本の才能であれば、それが可能なハズなのに・・・・残念。

このあたりになると、美穂の楽曲制作に関する主導権は、完全に松本から筒美にバトンタッチされた感がある。
松本自身、作詞業のみならず、この頃になると小説執筆・映画制作など、別ジャンルでの活躍が目立ち始めた。
美穂を手掛け、それが成功したことで、歌謡曲に対する執着が失せたのだろうか?

それはともかく、松本・筒美の両御大に、それぞれ力量のあるうちに目をかけてもらえた彼女は、まさしく”Lucky girl”だった。(1999.12.28)

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