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見えない手の画法

見えない手の画法

あなたにもらったパレットから静かに新しい色が生まれはじめる。
出逢えた喜び、出逢って知ったつらさ、様々な色を足した。言葉ひとつで、映る物が変わってしまう。
しんと静まり返った夜の黒、木漏れ日に包まれた時の青、いずれも不安と悲しみは決して立ち去ろうとはしない。
かなしい旋律のメロディーを辺りに従えた、このパノラマは一体なんだろうか。

様々なペルソナを被ったあなたが現れては、パレットからよごれた原色を忠実に選び出し、無色のカンバスに鋳型の模倣を描き続ける。時々により画法は変わり、果てるともなく試行は繰り返される。

虹を描いてみた。
会社の無機質な空間に閉じこめられて、いつものようにいつものことが繰り返されただけの今日が、ようやく終わりを告げる頃だった。書類に落とした寝ぼけ眼を何気なく窓の向こう側に移した。
その視線の先には見慣れた風景を隠すように虹が架かっていた。

窓のそばにそっと近づいてみた。
虹の架け橋にはたどり着けないと言うが、その虹は目の前の歩道から色とりどりの色彩でアーチを描きだしていた。
遠くに浮かぶ夕日が、こちら側で降る小雨の一粒一粒に反射して生まれたのだろう。
でも、ほんの少しだけ勇気を出して、手を伸ばしさえすればそれはずっと側にいてくれたのかもしれない。
刹那い幻を背にしたとき、「もう、これで最後かもしれない」と思った。

これまでに幾度となく、切なさに身を焦がし、涙をこらえて、出逢いを求めた。
その想いは土に還り、また産まれる。フラクタルな繰り返しのなかに垣間見える観測者の影。前方に続く整然としたストライプの舗道に背中を押され、気が付くとその中にいた。

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