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荒木由美子『渚でクロス』

荒木由美子『渚でクロス』
発売日 1977.06.10
作詞 阿木耀子
作曲 宇崎竜童
編曲 馬飼野康ニ

百恵のボツ作品? だとしたら、これは有効な廃物利用

今回ご紹介したいのは、第1回「ホリプロ・タレント・スカウトキャラバン」準優勝者である、荒木由美子。
ただ、個人的にはTVドラマ『燃えろアタック』の印象ばかりが強くて、歌手活動はあまり記憶に無く、このデビュー曲「渚でクロス」しか覚えていない。

他にも『燃えろ~』の劇中挿入歌だったモノ(タイトル失念)とか、怪作として評判の「ミステリアス・チャイルド」など、色々歌っていた事は覚えているのだが、それらがどんな楽曲だったか、イマイチ思い出せない。
決して歌手としてのTV露出が少なかったわけでも無いんだが。
でも、私の場合、彼女に限らず、そういうスタンスで記憶されてる70年代アイドルって、結構多いのだ。

相本久美子・木之内みどり・岡田奈々・高見知佳・香坂みゆき等、いずれも荒木と同様、ドラマ・バラエティ・CM等で、タレントとしての仕事は鮮明に記憶しているものの、歌手業に関しては、せいぜい2~3曲程度しか(それも曖昧にしか)記憶に無いパターン。

かような彼女達への歌手業に対する印象薄は、当時私が幼稚園~小学校低学年と、単純に幼かった事にも起因するのだが、実際にオリコンのデータを見ても、彼女等は大したヒット曲が無いわけで、こうした印象は案外、世間一般の総意ではなかろうか?なんか自分の不勉強ぶりを正当化しているみたいだけど、たぶん。

また、阿久悠も『スター誕生』出身者である片平なぎさについて、「彼女は歌手業の実績がイマイチだったせいで、『スタ誕』的には失敗という見方をされているが、女優としては成功しているのだから、『スタ誕』出身者の中では明らかに成功者なのだ」みたいな事を述べていたのだが、要するに片平も含めて、先述のアイドル達は皆、「歌手としてはB級でも、タレントとしてはA級」という、中途半端なポジションなのだ。

「A級アイドルとB級アイドルの区別は?」といった論議が取り沙汰されると、必ずそのボーダーラインで意見が割れるが、それは彼女達のような”A級且つB級”的な複合ポジションの中途半端なアイドルが大勢居るせいだと思う。80年代になると、この手のタイプはもっと増えるし、そりゃボーダー決めるのは難しいだろう。

そんなA級だかB級だかハッキリしない荒木であるが、この作品はスタッフを見ても判るように、先輩の山口百恵を意識した楽曲で、少なくとも作品の出来に関してはA級レベルに仕上がった。

まずは曲だが、宇崎竜堂の手によるマイナーロックで、構成は「A→A’→B→A””」といった按配。
マイナーロック調というのは、宇崎の百恵提供作品と合致する作風であるが、百恵作品がメロディ主体で制作されているのに対し、こちらはリズム主体(というか、フィーリング主体)の感が強い。

特にAメロ系はその傾向がハッキリ出ていて、百恵というよりは、それこそ宇崎の母体である、ダウンタウン・ブギウギ・バンドが演っても違和感無いかもしれない。
要するに、アイドル向けとしては”歌謡曲度数”が低くて”ロック度数”が高いんであるが、Bメロでは高音で”聴かせる”作りをしてるし、Aメロ系でも要所要所でリズムをブレイクさせて、ノリ易くしているのだから、まぁ悪くないだろう。

アレンジは馬飼野康ニで、宇崎同様、百恵作品を数多く手掛けているが、シングル曲で宇崎と組んだ事は無い。
というのも、馬飼野は百恵の初期作品のスタッフで、宇崎とは時期がズレてるからだが、要するに今回の狙いとしては、「百恵の初期スタッフと後期スタッフを組ませたら、どんなプロダクトになるか?」って事だろう、きっと。

実際、完成品は、宇崎の百恵作品とは異なるアレンジである。
マイナーロックの雰囲気を生かすべく、エレキギターの旋律と、ベース・ドラムスで構成するメリハリあるリズム隊をフィーチャーする趣向は共通するものの、オカズとしてストリングス&ブラスを被せる点が異なる。

明らかに初期百恵チックなサウンド作りだ。
でも、こうした初期と後期の融合(?)は、不協和音を奏でる事無く、すんなり溶け込んでる上に新鮮味もあって、狙いは成功したと云えるだろう。
フェイドイン気味にエレキが導入される、イントロ部分も格好イイし、歌直前のベースソロもイカしてるし。

作詞は阿木耀子で、テーマは「斜に構えたオンナの、粋がった恋愛模様」(?)とでも云うべき内容で、阿木得意の世界だし、百恵作品とも共通している。
また、Aメロではタイトルの”クロス”を、Bメロでは”遠く”を縛りとしながら、1番~3番にかけて流麗にストーリー展開していく構成も阿木っぽい。

更には、彼氏の事を”あの子””坊や”呼ばわりする姉御ぶりだが、コレも百恵の「ロックンロール・ウィドウ」なんかと似通った設定で、詳しい事情は知らないが、コレは百恵に提供してボツった作品なのか?

そう考えれば、作詞・作曲・アレンジと、何から何まで百恵色の強い人選・作風にも納得が行くのだが。
たとえ荒木がグランプリでは無いにせよ、普通、ここまでモロ二番煎じな楽曲を、わざわざ大手プロダクションが所属の新人デビュー曲にあてがったりしないだろうし。

そうだとしたら、気になるのは「なんでボツったのか?」という事であるが、考えられるのは、ロック色の強いメロディや、初期っぽいアレンジ以上に、この歌詞のせいだと思われる。
作品世界・構成・設定と、歌詞こそあらゆる面で”百恵的”なわけだが、唯一異なるのは、主人公が”蓮っ葉”である点だと思う。

たとえ姉御という設定で共通してても、百恵作品で見られる”仇っぽさ””色っぽさ”といった、大人のオンナ要素が低いのだ。だって渚で小石を投げ飛ばしたりするし、しかも♪親父はいない遠く遠く~ だし。
“親父”って・・・百恵作品には無い語彙だろう、これって。
主人公のキャラ設定がやや幼かった故に、百恵のイメージとはミスマッチで、結果ボツったんだろう。
本当にボツ作品なのかどうか不明だが。

でも、その分、百恵よりもやや若い、荒木にはフィットする歌詞ではある。
百恵同様のアルトな声質は、マイナーロックにも程好くマッチするし、大人びた風貌も、斜に構えた作品世界とは肌が合うし。というか、キャラの合致以上に、荒木が上手く歌ってると思う。
高音域のBメロではやや苦しげで、音程もズレるが(こういう歌唱指導か?)、低音域のAメロ系では音もそんなにズレないし。

微妙なコブシを利かせたりしていて、全体的に堅めではあるが、新人のデビュー曲でここまで上手く歌えれば充分だろう。
この作品、歌詞・曲・アレンジ・歌唱、全ての面で水準を超えていて、たとえ百恵でボツったとしても、決して安っぽい作品では無い。有効な廃物利用と云えよう。

冒頭で述べた通り、私はコレ以外、彼女のシングルは覚えていないのだが、以降もこの手の百恵路線で攻めて行ったんだろうか?
湯原昌幸との結婚後は、百恵とは対照的に、夫婦揃ってTVに出て円満ぶりをアピールしていたけど。

そういえば代表作『燃えろアタック』にしても、テーマはバレーボールのスポ根なのに(”ヒグマ落とし”だの定番の必殺技もあった)、一方では出生の秘密だの『赤いシリーズ』的なドロドロしたテーマも並行してたしなぁ。
そう考えると、荒木は”ポスト百恵”の本命だったのか?それとも単にホリプロはこういうのが好きなのか?(2000.10.21)

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