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曇天の空と常夜灯の彼方に

曇天の空と常夜灯の彼方に

Google play Musicのシャッフル再生で、聖子ちゃんの「制服」を久しぶりに聴いた。
偶然掛かったはずなのに、この曲が流行った当時の断片的な記憶が一瞬にして呼び戻された。

私は「制服」が流行った大学一年の春、今ではアーケードと呼ばれるテーブル型ゲームに熱中していた。明けても暮れてもゲーム機の前に座り込み、勉学そっちのけでゲーム攻略に励んでいた。
授業の代返は言うに及ばず、代返防止用として配布される色違いの出席用紙を前もって余分に掠めておき、ひと通り揃える用意周到ぶりを以って、抜かりなく教室を抜け出した。

ディグダグが携えた銛と空気ポンプを駆使して地中深く掘った縦穴に敵キャラを追い込み、その穴の天井を塞いでいる岩をタイミングよく落下させて岩ホールド攻撃を完成させ一斉に敵を潰した時、ポップなステージクリア音と共に友達の歓声と野次馬の喧騒が生み出す刹那的な一体感を抱え込むように、当時の後楽園ゲームコーナー全体に「制服」は響いていた。四角い窓枠から望む前方には確か、ひとりぼっちで過ごす東京の四月の曇天が見えた。

バイトの帰りに深夜のゲーセンへ日参し、両替した100円玉をゲーム機の端に積み上げ、その日稼いだバイト代相当分が霧消する明け方、ドンキーコングやギャラガの4方向レバーで前日より確実に成長したゲームだこの指先から連打されるピコピコ音に混じって、少し前に高校を卒業した私の耳に聞こえる「制服」は眩しかった。早朝の帰り道、街並みに佇む電信柱の常夜灯は所々にまだ夜の気配を残し、前方に続く灰色の道程を照らし出していた。

喚起した想い出の欠片は思うに、「制服」の発売が私の高校卒業と重なり、歌詞の内容が胸に届き、柄にもなく感傷的になったせいかもしれない。

今でも目を閉じると、季節は桜が枝に咲く頃を過ぎ、初期のハイトーンが消え、キャンディボイスが確立される過渡期のハスキーさが残る、聖子ちゃんの歌声が聴こえてくる。

この曲は「赤いスイートピー」のB面で、トップアイドルだった聖子ちゃんらしくカップリング曲にも注目が集まり、ファーストプレス後のジャケットのタイトル表記が「赤いスイートピー/制服」になるほどの反響ぶりだった。
デビュー20周年アニバーサリーアルバムや多くのベストアルバムにも収録され、私だけの思い入れではなく聖子ちゃんを語る上では欠かせない、ユーミンが作曲した名曲であり、我が懐かしの郷愁ソングでもある。

 


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