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中森明菜『ミ・アモーレ』

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発売日 1985.03.08
作詞 康珍化
作曲 松岡直也
編曲 松岡直也

女性歌手では珍しい、大人のサンバ歌謡の成功例

明菜初のラテン歌謡シングルである。
いささか唐突な気もするが、アイドル歌手としてスタートした女性歌手が、大人の歌手へとイメージチェンジを図る手段として、ラテン系歌謡を歌うことは決して珍しくはない。
ラテン音楽自体がスケールの大きなものであるし、それを歌いこなすにはそれ相応のキャリア・実力が伴わないと無理だから、ラテン歌謡をシングル盤としてリリース出来ることが大人の歌手の証である、という共通認識すらあるように思う。

これまでにも、伊藤ゆかり「恋のしずく」・金井克子「他人の関係」とかあったし、80年代に入ってからも、山口百恵「謝肉祭」・岩崎良美「プリテンダー」・本田美奈子「Sosotte」(これはちょっと意味合いが異なるか)、海外でもマドンナ「ラ・イスラ・ボニータ」とかあるし。
そう考えると、「脱・アイドル」としての常套手段であるし、むしろ王道ですらある。
ならば明菜がこうしたジャンルにトライするのは、ごく自然な流れか。

ただ、同じラテン系でも「ミ・アモーレ」のようにサンバで「脱・アイドル」を図るというのは、女性歌手の場合、結構珍しい。
フラメンコ・ボサノバ・タンゴ(ラテンか?)とは違って、サンバはあのホイッスルに象徴されるように、気分を高揚させる音楽の典型なので、普通アダルトというよりも逆にアイドル向けの音楽だから。
これまで多くの女性アイドルが、その絶頂期にサンバを歌っていることからもそのことが判ってもらえよう。
大場久美子「スプリング・サンバ」、榊原郁恵「ラブ・ジャック・サマー」、河合奈保子「夏のヒロイン」、おニャン子クラブ「かたつむりサンバ」などなど。
そうしたサンバ歌謡の常識を破るべく(?)、明菜が「ミ・アモーレ」で大人のサンバ歌謡に挑戦。

まぁホントはこれまでにも、岩崎宏美「夏に抱かれて」とかあったけど、なぜか討ち死。
あ、そういえば明菜はTV「スター誕生」のオーディションで、「夏に抱かれて」を歌ったことがあるらしい。
もともと好きなジャンルではあるのか?

それはともかく、作家陣にラテン・フュージョン音楽の大御所である松岡直也を迎えたこともあって、この作品はセールス的にも内容的にも大成功となった。
音作り・曲作りからして、これまでのサンバ歌謡とは一線を画す仕上がり。
サンバホイッスルで誤魔化すようなマネはしていない。コレなら世界にも通用するのでは?
欧米人って、ラテン音楽好きだから。
このサウンドを聴くと、今までのものは単にサンバ・フレーバーを表層的に取り入れただけに過ぎない、とすら感じる。

歌詞もこのサンバサウンドに合わせて、リオのカーニバルを舞台に選び、「アモーレ」といった現地語を導入することで異国情緒を醸し出してるし、この熱気ムンムンなムードに合わせて、情熱的な恋愛感情をも巧みに表現している。
明菜もこのスケール感に呼応すべく、迫力あるヴォーカル(やや力不足だけど)でなんとか対応。

結果、ラテン歌謡の持つスケール感と、サンバが持つ高揚感の見事な相乗効果で、明菜自身この作品で「脱・アイドル」に成功。レコード大賞の受賞も当然である。
なお、この歌の別バージョンである「赤い鳥逃げた」については、そんなに意味のあるものとは思えないので、ココでは割愛します。(1999.11.19)

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