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小林麻美『雨音はショパンの調べ』

小林麻美『雨音はショパンの調べ』
発売日 1984.04.21
作詞 Gazebo P.L.Giombini・日本語詩 松任谷由実
作曲 Gazebo P.L.Giombini
編曲 新川博

原曲をベースに個性を出す事に成功した、洋楽カバーの理想形

元々アイドルとしてデビューした小林麻美であるが、70年代中盤以降は活躍の場をモデル業へとシフトし、80年代になると女優業との両立で、「同性が憧れる女性」の代表格として注目を集めるようになり、こうして再脚光を浴び始めた頃に、およそ8年ぶり(!)でシングルリリースされたのがこの曲である。

言うまでも無く、この曲は洋楽のカバー盤で、元歌はガゼボ「アイ・ライク・ショパン」。
先にヒットしたのはガゼボ盤で(オリコン9位/20.4万枚)、曲が世間に浸透しつつある最中、つられて小林盤もヒットしたような形であった。

曲構成はオリジナルをそのまま流用していて、「A→B→C」の構成で、Cメロがサビ。
A・Bメロは譜割が大雑把で緩やかなメロディラインだが(往々にして洋楽は譜割が大雑把なんだけど)、サビメロでは徐々に譜割も細かくなって、次第に高音域で盛り上げる構成。
全編メジャー調だが、サビメロが微妙に哀愁漂う旋律で、高音で盛り上げるわりには、作風を格調高いモノにしている。

ちなみに、元歌はエンディングが主音で終わらず、その点が聴後に独特の余韻を残すのだが、小林盤では♪Ah~ と、違った意味での余韻を歌唱で加えつつ、実は何気に主音で締めるという、小技をカマしているのも見逃せない。全体としては、品格がありながら親しみやすいという、非常に優れたメロディだと思う。
しかも覚え易いし。

一方アレンジだが、旋律そのものは元歌に倣っているし、イントロでのシンセ音こそ違えど、打ちこみ主体に生ピアノ加味という、楽器構成もリズムセクションも元歌にほぼ倣っている。
しかし、ガゼボ盤がメリハリを利かせた低音強調の重厚なアレンジを施してるのに対し、小林盤は軽めの処理で抑えているため、全体としての雰囲気はかなり違う。

元歌はアレンジも曲同様に格調高い雰囲気だが、小林盤はアンニュイ。ところで、このアレンジはタイトルが”ショパン”なだけあって、ピアノの旋律が秀でている。

イントロ・間奏でのソロ部分が、主旋律と全然違うメロディなのも偉いが、Bメロでの♪止めて~ ♪あのショパン~ それぞれ後には空白が続くものの、この空白部分にピアノを当てこんでいるので、繋ぎとして違和感が無く、それどころか、ココでのピアノが作品全体を締めるアクセントとして、非常に大きな効果を上げてるように思う。

小林盤の訳詞はユーミンが担当しているが、元歌の大意を大まかな骨組としながらも、独自性をキチンと発揮している。
先述のように、メロディは譜割が大雑把なので、日本語は載せにくいハズだが、そこはサスガにユーミンで、センス良く日本語詩を嵌めこんでいて、特に譜割の大きいAメロ部分が秀逸だが、Bメロの♪あのショパン~ 部分もなかなか。
ココは元歌の♪I Like Chopin~ に当たるのだが、どうにも韻を踏んでる感じなのだ。
ちょっと笑える気もするけど。

主題は特に無く、雨の日を舞台に、ショパンの調べを聴きながら”彼”との想い出に浸るという、その様子を抽象的に描いてるだけなのだが、日本語との相性が悪いメロなだけに、変に歌詞に意味を持たせるよりは、こうして雰囲気だけの演出に留めたほうが無難ではある。

また、小林の歌唱が、こうした訳詞の特性を遺憾無く発揮させてるように思える。
アイドル時代とは打って変わって、ココでは息絶え絶えなアンニュイ唱法を披露しているが(ジェーン・バーキンを意識か?)、決して上手い歌唱とは言えないものの、むしろ気取った主題がオシャレに表現出来てるし、”聴かせる”手段に訴えることなく、大雑把な訳詞を淡々と歌うおかげで、語感をリスナーに意識させないのも正解。
一種BGMとして機能させる事に成功しているのだ。

この作品、サウンド・歌詞の両面で、元歌をベースにしつつ、全く異なる個性を醸し出す事に成功している。
完成度も高いし、カバー盤として理想的な仕上がりだと思う。
しかし、今作の一番の勝因は、なんといっても小林麻美に歌わせた事だろう。
というのも、こうした格調高いユーロサウンド(しかも日本語向けじゃない)を、日本語で男が歌っても、イマイチしっくり来ないと思うのだ。

オリジナルのガゼボは男性歌手だが、イタリア人だし英詩なので、格調高さがダンディズムと上手く合致するのであって、これが日本人の男性歌手が訳詞でカバーしてみた所で、オリジナル同様の雰囲気はまず再現できないだろう。ダンディズムどころか、キザ芸のギャグにしかならないかも。
それならいっその事、女性歌手にカバーさせたらどうか?という発想だったと思うが、コレは理に適っている。

格調高さは、女性特有のアンニュイ・ロマンティックとの相性が良いハズだし、日本人女性でも無難にこなせるラインだから。そういう観点では、当時の小林麻美というのはベストな人選である。よくぞ再び歌ってくれた。

事実、彼女にとっても、この大ヒット(オリコン1位/52万枚)により、狭い枠でのカリスマから脱却し、幅広い層に存在をアピールすることに成功したわけだし、まさにハマリ役だった(役じゃないが)。
一度もTVで歌ってくれなかったのは残念だが(プロモは嫌というほど観たけど)。
でも、この戦略も彼女の場合は正解なのだが。1984年作品。(2000.8.2)

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