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高見知佳『ジャングル・ラブ』

ジャングル・ラブ
発売日 1981.03.01
作詞 安井かずみ
作曲 加藤和彦
編曲 加藤和彦

斬新さは無いが、大胆な方針がインパクトを与える異色作

レアな音源が多数復刻された「お・し・え・て・アイドル」シリーズ(引っ張る引っ張る)。
僕は初聴の作品が多かったのだが、中には懐かしい作品も幾つかあって、今回取り上げる「ジャングル・ラブ」もそんな一曲である。

といっても、当時歌番組で何度か目にした程度なのだが(ちなみに初めて観たのは『3時のあなた』。
昔はワイドショーにも”歌コーナー”があって、よくB級アイドルや演歌歌手が出演していた)、あまりに楽曲のインパクトが強烈で、僅かな鑑賞にもかかわらず脳裏に焼き付いてしまい、20年もの間、ずっと忘れられずに居たのだ。機会があれば、再聴したいナンバーの筆頭だったが、この度めでたく復刻と相成った。
で、ようやく熟聴してみて、やっぱり変わった作品だなと改めて思う。

作詞の故・安井かずみは女流作家の大御所で、手法としては主題を捻らず忠実に表現するタイプである。
「ちいさな恋」「赤い風船」など可憐なアイドル作品も多いが、いずれも表現に関しては、隠喩や含みを避けたストレートぶりで、”オシャレでフェミニンな文化人”という当人のイメージとは裏腹に、意外と作風は男性的で単純明快である。

まぁ単純明快とは云っても、その判り易さが歌謡界では”大衆的”って事でプラスに作用するわけだし、言葉の嵌め込みも上手なうえに、「難語・造語を使わない」という全うなポリシーも感じられて、職業作家としての才覚は卓越しており、決して凡庸ではないが。

で、こうした直球勝負な特質は今作でも大いに発揮されており、まず主題からしてそのまんまタイトル通りである。
普通このタイトルだと、「ジャングル → 熱帯 → 情熱的」との図式で主題は”熱愛”かと思いきや、そんな小細工は一切無く、純粋に密林での恋愛がテーマなのだ。
事実、主人公は♪裸足で駆けまわる ジャングル育ちよ~ で、♪チーターを連れて 木洩れ陽を浴びキラキラ ジャングルを歩く~ と、野生児丸だしなうえに、デートの誘いも♪河で水を浴び あなたが来るのを待っているとこ~ というアマゾネス調で、恋人へのもてなしも♪赤い木の実をとり 不思議な味のする飲み物をつくる~ という見事な未開人ぶり。

挙句の果てに、求愛までもが♪月夜の晩に歌う あなたを呼んで Uh Uh Ah~ という(ひーっ)、主人公は100%オオカミ少女なのだ。
とまぁ、非常に変わった歌詞なのだが、こういうのって、ほとんどピンク・レディーに近いやり口であろう。
ピンク・レディーの場合も、「UFO」では主人公がホントに宇宙人だったし、「透明人間」でも主人公はそのまんま透明人間だったわけで。

いずれにせよ、アイドル系ではレアな手口だと思うが、まぁアイドルだからって、微妙な少女心理ばかりモチーフにする義務も無いから、こういう作品があっても全然構わないし、そもそも、このタイトルで深遠なる恋愛の機微を表現するなんて、初めから無茶な相談ではあるから、「だったら全開バリバリで野生児を描き切ってやろうじゃん!」という直球勝負に出るのも妥当といえば妥当。
ただ直球なだけに、今作はタイトルコールが結構しつこく、その点がクドくて難アリかも。

♪jungle love ふたり jungle love ふたりの jungle love~ ♪jungle love ふたり jungle love ふたりの jungle love~
楽曲を印象付ける作戦ではあろうが、それにしても唐突かつ強引なダメ押しぶりで、直球もここまで来ると芸が無いと思うが。

作曲は安井のダンナ、加藤和彦。
全編マイナー調のオールディーズテイストで、「A→A”→B→C」という構成であるが、非常に加藤らしい仕事だと思う。

というのも、曲構成が後に手掛ける高岡早紀「セザンヌ美術館」等と相似している上に、オールディーズ調も、同時期に手掛けた岡崎友紀「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」・竹内まりや「不思議なピーチパイ」等と共通するコンセプトだから。
ただ、今作はイタリアンツイストを基盤としたリズム重視型で、メロディアスな前述の作品群とは全く肌合いが異なる。

というか、リズムに頼り過ぎてて、お世辞にもキャッチーな旋律とは云えないのだ。
どのパートもメロディが似通ってるし、サビでの雄叫び(♪Uh Uh Ah~)以外、コレといった聴かせどころも無く、ノリが良い割には変化に乏しいんである。そういう意味では、石川秀美に提供した「あなたとハプニング」に近いかもしれない。

オールディーズ調では無いものの、独特なリズムをベースにした単調な旋律、突然♪wow~ と盛りあがる曲構成など共通してるし。

かような個性は、以前取り上げた「デジタル・ナイト・ララバイ」(作曲は伊藤薫)と通じる部分もあるが、今作は「デジタル~」ほど歌唱を考慮しているわけでも無いので、アレンジで工夫しないと絶対に”持たない”旋律である。ちなみに、s.r.p.さんも指摘されているが、この「ジャングル~」の旋律を使い回した焼き直し盤が、岩崎良美「どきどき旅行」である。

イタリアンツイストのリズム・曲構成など、かなり似ている。それはともかく、上記の弱点は加藤も重々承知しているのか、自身によるアレンジも相当趣向を凝らしてはいる(演奏はムーンライダースだが)。コンガの乱れ打ちに始まり、スラップスティックなドラムス・象の鳴き声モドキなシンセ等が加わり、イントロからして既に”ジャングル気分”が満載で、随所にかような”ジャングル効果音”を導入しながら曲が進行していく。
ただ前述の通り、あくまでも曲の基盤はイタリアンツイストで、アレンジも基盤はこれに追従しているのだが。

要するに、熱帯ムードをリズムで表現するのではなく、大胆な効果音で気分を醸し出そうという手法である。
いささか安直ではあるが、効果音もここまで大胆だと、リズムの平凡さも隠蔽されるし、強引なタイトル連呼部分にも”ジャングル効果音”を被せる事で、コールのクドさを上手く紛らわしている。
さらに、今作は高見知佳のヴォーカルにも、多少機械的な処理を施しているのが特徴的。

というのも、彼女の声質には多少ハスキーな個性が見られるものの、正直、歌唱力は凡庸であり、大胆な主題・サウンドだと(しかも曲がつまんない)、普通に歌えば”歌唱負け”しかねないリスクがあって、何かしら加工することで、歌唱にも楽曲ばりの個性を与えようという目論みだろうが、これが意外と功を奏しているのだ。
これは中森明菜「飾りじゃないのよ涙は」にも見られる手法であり、今作の特筆すべき美点だと思う。

この作品、ムーンライダースがバックという事で、一部で「ニューウェーブ歌謡の傑作」との声も訊くが、サウンド的にシンセ等を導入してはいるものの、僕はそんなに斬新だとは思わない。
“ジャングル”を冠した題名といい、直喩でそれを表現する歌詞といい、凡庸なリズムと大胆な効果音の組み合わせといい、笠置シズ子「ジャングル・ブギ」と同じだから。
だったら同時期にイギリスでブレイクしたアダム・アントのほうが、独特の”ジャングルビート”で熱帯感を表現している分、よっぽどニューウェーブであろう。

まぁ今作は笠置のパロディなのかもしれないが、いずれにしても斬新さは無い。けど、珍しいとは思う。
ここまで思いきった楽曲制作(歌詞・アレンジ面)してる作品なんて、80年代のアイドル歌謡ではあまり類を見ないし、それ故にリスナーには強烈なインパクトを与えているのだから、異色ながらも成功作だと云えよう。

しかも、今作は詞・曲の両面で目立つ欠点がありながら、かような思い切りの良さで、欠点を掻き消す事にも一役買ってるわけで(てか、力技でねじ伏せている感じだが)。やはり何事も中途半端はダメって事か。

こんなに個性的な作品であるが、高見のビジュアルはそれを凌駕していた。
最近、当時のビデオを見たのだが、衣装はヒョウ柄の”ジャングル・ルック(?)”だし、振り付けも珍妙なうえに、スタジオを縦横無尽に走り回ってインパクト大賞であった。
僕が20年もの間「ジャングル~」を忘れられずにいたのは、楽曲もさることながら、高見自身のインパクトに拠る部分が大きかった事を、今回再確認した次第。

でもまぁ、タレントとしての高見知佳のイメージも、当時はこんな按配ではあったのだが。
アイドル歌手とはいえ、主戦場はバラエティ畑だったし、しかも、下ネタをも辞さない大胆発言と、何人と対峙しようとも物怖じしない無遠慮さが彼女のウリだったのだから。
現在の榎本加奈子・山川恵里佳とかに近い雰囲気か。

高見と訊いて個人的に忘れ難いのは、名高達郎が婚約問題だかの騒動に巻き込まれた時である。
当時、名高がレギュラー出演していた『アイアイゲーム』収録中、TV局に芸能レポーターが大挙押し寄せ、この時、共演者の中尾ミエと高見が、自ら名高の護衛を買って出たのだが、両者は女番長とその手下さながらの凄みで、レポーターに対して「おらおら!邪魔なんだよ!」「どきな!通れねぇだろ!」など啖呵を切りまくっていたのが彼女らしくて印象深い。

しかし、そんなオテンバ高見も、80年代末期からは情報番組のホステスがハマリ役となり、すっかり常識人として落ち付いてしまった感がある。
でも、NHK『スタジオパークからこんにちは』では往年の大胆さをたまに垣間見せたりしてたんだけど。1981年作品。(2001.05.13)

 heaven and earth

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