作詞 松本隆
作曲 筒美京平
編曲 船山基紀
“超15歳級”な生意気ぶりが興味深い作品
前作「C」では、『毎度おさわがせします』が啓蒙する”性典”のイメージを強調した作りをしたが、今回はソレに付随する”生意気なツッパリ”がテーマ。タイトルもそのものズバリだ。
ただし、中森明菜「少女A」のような”ツッパリ歌謡”ではなく、生意気度が高くてツッパリ度は低い。
曲・アレンジ、サウンド面はハッキリ言って、ライム「思いがけない恋」のパクリ。結構似ている有名な話だが。
曲は「C」同様、マイナー調のアップテンポだが、符割りは大まかだし、キーも低めで、「C」に比べれば歌いやすいメロディだ。そういう意味では、歌い手にマッチした曲といえよう。アレンジはディスコサウンド。
要所要所でティンパニーっぽいオカズなどを取り入れて、結構細かいリズムセクションなのだが、メインのキーボードが大らかなため、全体を通して聞く分には、流れるように心地よい、上品なディスコサウンドに仕上がった。
で、歌詞だが、主題は『恋人と別れた少女が、後悔の念を吹っ切って、強く生きていく決意』である。
この勝気な様が”生意気”というわけだ。
とりわけ珍しいテーマではないが、まぁ美穂にマッチした主題だとは思う。
しかしこの歌、主題とは別の部分でホントに”生意気”なのだ。
松本隆が主題の凡庸さを嫌ったのか、舞台設定が当時15歳の美穂にはおよそ不釣合いな、”超15歳級”とでも言うべき羽振りの良さなのだ。なんたって、「一人少女が異国で失恋の痛手を癒す」のだから。
♪私寝椅子で夕陽を見てる~ ♪ギター弾く異邦人 もっと陽気な歌に変えてよ~
う~ん、ゴージャス。 完全な絵空事。 しまいには、♪一人異国で優雅に泣くわ~ だし。
こっちのほうがよっぽど”生意気”だろう。生意気の駄目押しか?
具体的な場所は匿名だが(シンガポールなのか?)、たとえ舞台が台湾であろうが、ニューヨークであろうが、いずれにしても浮世離れしたゴージャス振りであることには変わりない。
これほど特異なシチュエーションにもかかわらず、聴いていてそれほど違和感が無いのは、美穂自身が”超15歳級”な大人っぽいキャラだったせいか?
こういった側面を、松本がどこまで計算したのかは、知る由もないのだが、おかげで平凡な主題にもかかわらず、結構面白い作品に仕上がった。(1999.12.28)

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