河合奈保子『けんかをやめて』

河合奈保子『けんかをやめて』
発売日 1982.09.01
作詞 竹内まりや
作曲 竹内まりや
編曲 清水信之

曲・歌詞の完成度に対し、安っぽいアレンジが泣き所

「脱・アイドル」を模索してリリースされた第1弾シングル。
当時の「脱・アイドル」としては王道である、ニューミュージック志向だ。
松田聖子のユーミン起用に対抗して、奈保子陣営は、堀ちえみ「待ちぼうけ」などでアイドルに楽曲提供をし始めた竹内まりやを起用。これまでの奈保子には無かったスローテンポな楽曲で、彼女はこの作品で新境地にトライした。

まずは曲だが、60年代アメリカン・オールディーズを彷彿とさせる、まりや得意のメジャー調・3連ビートもの。
アン・ルイスに提供した「リンダ」などでもお馴染みだ。

しかし、随所にマイナー調を加味することで、哀愁を醸しだし、どこかムーディーで上品な仕上がりに。
アイドルがちょっと背伸びをして、大人をアピールするにはベストな曲作りだろう。
頭サビで始めるキャッチーな作りも、アイドル向けだし。

歌詞は「2人の男を同時に好きになってしまう」という、女の子の身勝手さをコケティッシュに表現している。
この「何様な身勝手ぶり」がリスナーの好悪を激しくさせる向きはあるのだが、極めて完成度の高い仕事ぶりであることには疑念の余地無し。

画期的なコンセプトでありながら、ありふれた言葉を用いて解りやすく表現し、しかもメロディにもきっちり嵌まっているという、竹内まりや全作品の中でもベストに位置する、オリジナリティに溢れた比類無き優れモノだ。
こうした「何様ぶり」「身勝手」「蠱惑的」といったコンセプトのアイドル作品は、他には山本リンダ「狙い撃ち」くらいしか思い付かない(アイドルじゃないか?)。

とまぁかように竹内まりやの曲・歌詞は見事なのだが、肝心のアレンジが安っぽくって、この作品は損をしているのだ。
3連ビートのリズム感を強調する作りにはしているし、ピアノの伴奏・チェンバロの導入・カスタネットの響き・抑えた女性コーラスなど、フェミニンなムードを伝える音作りもしてはいるが、いかんせんスカスカ。
延々とサビを繰り返すだけのエンディングも芸が無いし。
必要最低限のシンプルなアレンジといえば聞こえはイイが、これじゃ余りにもシンプル過ぎ。
曲・歌詞の完成度に全然アレンジが追いつかない感じ。

一方、奈保子の歌唱は相変わらず冴えている。
低音域主体の楽曲なので、かなり抑えた歌唱だが、抑えながらも”泣き”を導入しているあたりは、「身勝手な振る舞いのツケを内省する」という主題にフィットし、見事な演出効果を上げている。
フェミニンで大人びた新境地への冒険も、難なくクリア。

アレンジだけが陳腐で失敗したが、それでも優れた作品世界・歌唱力は共に高く評価された。
この成功で彼女は実力派として認知され、しかも同性の支持を集め、この歌をフィーチャーしたアルバム『あるばむ』はオリコン№1を獲得。「脱・アイドル」への滑り出しは快調であった。(1999.12.17)

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