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原田知世『愛情物語』

原田知世『愛情物語』
発売日 1984.04.25
作詞 康珍化
作曲 林哲司
編曲 萩田光雄

AORを女性アイドル向けに再構築した意欲作

前作に引き続き、知世が主演した同名映画の主題歌。
この作品、一聴する分には、スローテンポで可愛らしいアイドル歌謡だが、よく聴くとかなり渋い作品だ。
デビュー以来、ずっとニューミュージック路線を一貫してきたが、その志向がこの作品でピークに達したと云える。

歌詞に「愛情物語」はフレーズとして出てこないが、『足ながおじさん』をモチーフとした原作のテイストは、一応表現されている。
 ♪はじめて逢うのに想い出のような人~ ♪あなたですか 出会う前からずっと 胸の中で私を呼んでた~
 ♪必ず迎えに来てくれる 信じてた~ ♪姿見えない優しさ 信じているのは~
しかし、寓話をアイドル歌謡として完全に消化しきれず、主題もよく判らないし、全体としてはラブソングとも文芸路線ともつかない、まとまりに欠けて中途半端な印象である。
でも、この歌詞の中途半端ぶりが、映画本編の出来の悪さと地下水脈で共通していて、見方を変えれば、本編の内容を如実に体現する優れた主題歌と言えなくもないけど(鬼か)。

曲はメジャー調のスローテンポで、サビ前でマイナー調加味。
単純な曲構成のうえに、サビもちょっと弱いが、とりあえず女性アイドル向けの可愛らしい、上品なメロディだとは思う。覚え易い楽曲だし、知世の個性にもマッチしていて、そんなに悪くない出来だ。

しかし、この曲はよく聴くと、杉山清貴&オメガトライブ「サイレンスがいっぱい」をメジャー調で展開させたかのような楽曲で、基盤はAORなのだ。AOR調のメロディを、女性アイドル向けに可愛らしく再構築した作品、という解釈もできる。そういう意味では意欲作だし、林哲司の本領が十二分に発揮された仕事とも言えよう。

アレンジはAOR風のメロディを引き立てながらも、アイドル歌謡としての体裁を配慮した作り。
ドラムス・ベースのリズムセクション、エレピアノの音色は、あきらかにAORのそれなのだが、ギターをほとんど使用せず、可愛らしくて上品なシンセ類・キーボードでサウンドに厚みを加えているので、サウンドだけでも、ちゃんと女性アイドル歌謡として成立している。

所々、キラキラしたような音を導入していたり、どこか郷愁を誘うような旋律だったりするのは、アイドルっぽさの啓蒙という以上に、歌詞の”足ながおじさん性”(なんだそれは)を意識し、ある種の憧憬を表現する仕掛けだと思う。このキラキラした感じが、4月リリースという、初夏を先取りする季節感とも絶妙にマッチしている。
夏っぽいサウンドというのも、これまたオメガ的だったりするのだが。

女性アイドルでオメガっぽい作品と言えば、なんといっても菊池桃子だが、彼女の場合は、「Summer Eyes」「Broken Sunset」「Nile in Blue」等のように、曲も含めて、アイドル向けにサウンドをリアレンジすることなく、そのまんまオメガ風に再現したような楽曲が多い。

それに対して、この作品の曲・アレンジは、桃子作品と比べれば、同傾向でありながらも、格段にアイドル指数が高い仕上がりで、モロAOR(もしくはフュージョン)な”桃子型”に比べると、AORをアイドル歌謡として消化する”知世型”は、色々と趣向を凝らさなければ難しいだけに、こっちのほうが志としては崇高だろうし、とりあえず完成品として結晶しているのだから、この作品は傑作と言ってイイだろう。(2000.2.25)

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